内閣府より発表された弾道ミサイル落下時の行動について
4月21日付で内閣府国民保護ポータルサイトにて掲載された
「弾道ミサイル落下時の行動について」という資料。
要点としてはサイレンなどにより、その情報を得たら
屋外にいるなら地下街または頑丈な建物に避難する
近くに建物が無いなら、物陰に隠れるか、伏せて頭を守る
室内では窓から離れるか窓の無い部屋へ
一見、非常にシンプルな内容に見えますが、とても合理的な指示であると思います。
このブログを普段から拝見して下さってる皆様は、わざわざ説明するまでもないかもしれませんが、今回は「軍事」という観点から、何故この指示が合理的なのか、簡単ながら解説していきたいと思います。
なお筆者はあくまでも趣味で軍事について学んでいる一個人であり、如何なる政府行政機関にも属さない立場です。
この記事の内容については、個人的に内閣府より公表された情報を考察したものであり、如何なる行政機関の発言・見解にも属さず、また内容についての責任は負わない旨をご理解下さい。
最新情報・正確な情報は必ず政府行政機関、または地方自治体などの広報より入手して下さい。
爆発により生じる被害とは
北朝鮮が日本向けの準中距離弾道ミサイルに核弾頭を搭載可能か否かという部分については意見の分かれる部分でもありますので、今回は通常弾頭による攻撃と仮定して話を進めます。
爆発により生じる被害は、大きく分けて3つ
①破片の飛散
②爆風圧
③放射熱
通常弾頭では特に破片の飛散と爆風圧による影響が大きくなります。
戦場というと銃弾に倒れるというイメージがあるかもしれませんが、「榴弾砲」が登場してからというもの、その爆風と破片により死傷した兵士は銃弾に倒れた兵士の数を圧倒的に上回るかと思います。
歩兵の装備で防弾ベストとヘルメット(鉄帽)がありますが、これらも今でこそ小銃弾に対応出来るようになっているものの、元はといえば「破片から身を守る」意味合いが大きかったのです。
砲弾の炸裂後は「キュン!キュン!」と甲高い音があちらこちらに鳴り響きます。
砲弾そのもののシェル=金属の外殻や、周辺にある小石などが、銃弾のようなスピードで飛び交っているのです。
当然、直撃すれば銃で撃たれたのと変わらないダメージを受けます。
爆風のダメージもかなり深刻で、ノドン弾道ミサイルのペイロードである1000kgに相当するTNT火薬が搭載されたとすると、着弾点から離れた場所でも爆風だけで重傷を負うリスクがあります。
何せ155mm榴弾砲(TNT6.6kg)でも100m以内が負傷リスクありと判定されるくらいですから、その150倍となれば相当な範囲が負傷可能性ありの範囲に入ります。
爆発の影響範囲は球体状なので、正確には150倍の^1/3に相当するかと思いますが。
(上記値については負傷公算10%=1割の確立で負傷する距離だったかと)
但し、逆を言えば、体に大きな影響を与える破片と爆風の直撃さえ凌げれば、生存率は確実に上がります。この点を考えれば爆風や破片の影響を最小限に抑えられる「屋内へ避難」というのは非常に合理的です。
特に地下街は、厚さ数mの地面という強固な防壁に覆われていますので、地中貫通爆弾(MOP)のような特殊弾頭で無い限り、これを貫通するということはまずありえないでしょう。
また鉄筋コンクリート製の建物も、一般的な家屋に比べて爆風への耐久性は非常に高く、全壊するということは直撃を受ける、ほぼ零距離で弾頭が炸裂するなど余程の規模でないとありえません。
そもそも市街地で多くのソフトターゲットを殺傷するのであれば、爆発方法は着発信管による地表炸裂ではなく、時限信管などにより一定の高度で空中炸裂させるエアバーストでしょうから、強固な建築物は一部外壁などの破損はあっても倒壊に至る可能性は低いです。
(爆発の影響は平面では無く、球体として広がりますので、ピンポイントに火力を集中するのではなく、ソフトターゲット=人や非装甲車両などを破壊出来るだけの威力をなるべく広範囲にばら撒くのであれば、エアバーストが圧倒的に効果が大きくなります。日本語では曳火射撃とも言います)
ただし、どれだけ頑丈な建物でも唯一の弱点はあります。
それが「窓」です。
窓ガラスは、そのサイズや構造にもよりますが、一般家屋の屋根がダメージを受ける爆風の半分以下の威力で割れると言われています。
過去の爆発事故の映像などを見ても、かなり距離のあるところから撮影しているのに窓ガラスが割れたというのは珍しくありません。
割れた窓ガラスは非常に硬度が高く、鋭利な刃物・凶器となって飛んできますので、これを受ければ致命傷になる可能性すらあります。
広島・長崎の原爆投下時にも、爆風で吹き飛んだガラスが全身にショットガンのように突き刺さった事例が実際に存在します(その方の生死は不明ですが)。
故に、出来れば窓の無い部屋へ、それが無理なら窓から極力離れてということになります。
最後に、物陰に隠れる、または伏せて頭を守るというのは、そのまま歩兵が砲撃を受けた際の防御方法に通じるものです。いわゆる「タコツボ」(1人が入れる即席塹壕)に入っているか否かで、榴弾による被害は大きく変化すると言われています。
またタコツボ掘るのが間に合わなくても、とりあえず凹みを作って、そこに伏せるだけでも生存率は上がります。
これは言わずもがな、破片に当たる確立が減りますし、爆風を受けるリスクを減らせるからです。
また「伏せる」ということも同じように破片の飛来する方向に対する体の投影面積を減らせますので、破片に当たる確立は低くなりますし、爆風の影響を受けにくくなります。
例えが貧相ですが、ドッジボールで相手の弾が飛んでくるとき、立ったままと身を屈めるのと、どちらが当たりやすいか考えれば、分かりやすいかと思います。
実際にはエアバーストなので「斜め上」から降ってくるような形ですが、それでも正面を晒すよりかは、姿勢を低くしたほうが、よっぽどマシです。
簡潔ながら、まとめさせていただくと、内閣府より公表されている緊急時の対処要領は全て、十分な効果が見込めるものです。
何も無ければそれが一番良いですが災害等と同様「もしも」に備えておくのは、他ならぬ自分自身のためになると思います。
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