「かが」就役で改めておさらい 「ひゅうが型」と「いずも型」の違い

「かが」就役で改めておさらい 「ひゅうが型」と「いずも型」の違い

3月22日に2番艦「かが」が就役した「いずも型護衛艦」。

これにより、海上自衛隊の運用するDDHヘリコプター搭載型護衛艦は「ひゅうが型」2隻と「いずも型」2隻となり、全てが全通甲板式になりました。

海上自衛隊初のDDHである「はるな型」が就役してから、実に44年後のことです。

さて、「ひゅうが型」と「いずも型」、共に全通甲板式のDDHということで、同じような性格の艦と見られることも多いのですが、実のところ中身は全くといっていいほどの別物になっています。

今回は「かが」の就役を機に、両者の違いを解説していきたいと思います。

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ひゅうが型は戦闘能力が充実

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「ヘリ空母」などとも呼ばれ、その航空運用能力が何かと注目されがちな「ひゅうが型」ですが、「いずも型」と違って高い攻撃能力を備えています。

vls

非常に大きな違いとしては、VLSの有無が挙げられます。

ひゅうが型には16セルVLSが搭載されており、中にはESSM発展型シースパロー対空ミサイルに加えて、アスロック対潜ミサイルが入っています。

すなわち「ひゅうが型」は、主砲こそ積んでいないものの、自らミサイルを用いて戦闘行動を取れるのです。

しかし、これ以外にも隠れたところに、この艦の大きな特徴が存在します。

まず対潜戦闘システム。

ひゅうが型にはOQQ-21システムが搭載されており、船首側にシリンドリカルアレイ・ソナー、艦尾側フランクアレイソナーが搭載されているのですが、このソナー尋常じゃないほどサイズが巨大なものなのです。

特にフランクアレイソナーが特徴的な大きさで、実に「長さ40m」とも言われています。

巨大なソナーを搭載していることにより、より低い周波数を用いた音を発信できるというメリットが生まれます。
(長い弦を弾くと、低い音が出るような理屈です)

水中においても音は減衰していきますが、周波数の低い音を用いることで、減衰の影響を減らす事が出来る→より遠くの目標を探知可能になるのです。

周波数が低い音は分解能、すなわち正確な位置や細かな情報を調べるには不向きですが、そこは艦載ヘリコプターの出番です。
おおよその場所を特定できれば、その海域にヘリを向かわせて、近くから分解能の高いソナーで精密探索を掛ける事が可能で、必要であれば自らアスロック対潜ミサイルを目標に撃ち込むことも出来ます。

更にOQQ-21システムは対潜情報処理や対潜攻撃指揮も統合したシステムとなっており、より効率的な対潜戦闘が可能です。

加えて、対空戦闘システムFCS-3も高い能力を有しており、ESSM対空ミサイルを用いる事で、個艦防御のみならず限定的ながら艦隊防空戦闘も可能。
FCS-3は対空戦闘能力を重視した「あきづき型」にも搭載されている高度なシステムであり、これを搭載している「ひゅうが型」も高い対空戦闘能力を有していることが伺えます。

これらの装備から分かるとおり「ひゅうが型」は艦隊の航空運用能力を担う中心的な艦であると同時に、自らも積極的に戦闘行動へ参加する性格の強い艦であると言えます。

特に、対潜戦闘能力に関しては、海上自衛隊の護衛艦でも最も優れた艦種といえるかもしれません。

個人的には「ひゅうが型」は「先の戦争での苦い経験から、潜水艦狩りに執念を燃やしてきた海上自衛隊の、その執念の集大成」と思っております…

いずも型は司令部機能・航空運用能力重視

対して「いずも型」は「ひゅうが型」より50m近く全長が大きくなり、更に基準排水量も20000トン近くと、非常に巨大な艦となりましたが、その兵装は
主砲・・・なし
VLS・・・なし
魚雷発射管・・・なし
自ら相手へ攻撃を仕掛けるための装備は全く搭載されておらず、近接防御システムとしてSeaRAMとCIWS、魚雷防御システムがあるのみです。

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つまり「ひゅうが型」と違って、自ら戦闘行動には直接参加することは、想定されていないと言えます。

では「いずも型」では何が重視されているのかというと「司令部」としての機能と、艦隊の航空運用機能の中核的役割を担うことです。

「いずも型」の艦内には従来のCIC=戦闘指揮所に加えて、大型モニターなどを備えた統合作戦部隊用の司令室を設置できるスペースが存在します。
「ひゅうが型」にもスペースはありましたがモニターなどは無かったようで、機能が大幅に強化されていると言えます。
現在3自衛隊の大きな課題となっている、離島奪還作戦能力向上という点において、陸海空の「洋上司令部」としての機能が期待されてのことでしょう。

更に船体が大きくなった事で、ヘリコプター運用のスポットも1つ増え、最大搭載機数も3機増えて14機となりました。

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艦尾側のエレベーターはサイド式となり、昇降可能な機体の制限も大きく緩和されています。
これにより「ひゅうが型」では艦内格納庫に降ろせなかったヘリも「いずも型」では対応可能です。

搭載可能なヘリも増えたことで、よりマルチな運用が可能になることが期待されています。

「いずも」の見学記録は、こちらの記事

 

長々と書いてきましたが、簡潔にまとめあげると

ひゅうが型
→自らも高い戦闘能力を有する。特に対潜戦闘能力は非常に高い。

いずも型
→戦闘能力は低く抑えた反面、航空運用能力と司令部能力が高い。

しかしどちらにせよ、今後の海上自衛隊において中心的な役割を担っていくことは間違いない護衛艦です。
新しく就役した「かが」も活躍してくれることを願います。