戦闘機パイロットの教官役「飛行教導群」

戦闘機パイロットの教官役「飛行教導群」

自衛隊でパイロットになれる人は、言わずもがな文武両道、高い操縦技術を備えたエリート中のエリートです。

戦闘機操縦課程を見ると、航空学生などの課程を修了してから更に飛行準備課程、初級操縦課程、基本操縦前期課程、同後期課程、戦闘機操縦基礎課程、ここまで終えて初めて実機での訓練資格が与えられ、戦闘機操縦課程に合格してやっと戦闘機のパイロットに至ります。

更にここから、編隊長資格などを取るために、ひたすら訓練と勉強を重ねていくことになります。

しかし、そんなエリート中のエリートであるパイロットに「指導する」役割を担う部隊が、航空自衛隊で1つだけあります。

航空総隊・航空戦術教導団隷下「飛行教導群」が、その部隊です。

旧名称は「飛行教導隊」で、組織改変により「群」になりましたが、変更されたのが2014年と日が浅いので未だ「飛行教導隊」の名前もよく聞かれます。

また「アグレッサー」「アグレス」の呼び方をする方も多いです


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飛行教導群とは

2016年まで新田原基地、現在は小松基地に本拠地を置く部隊で、F-15J/DJを運用していますがアラート任務には就かずに「教導」を任務としています。

年間の2/3は本拠地で過ごしますが、残りの1/3およそ100日は全国の戦闘機部隊所属基地に展開して、そこで任務を行います。

彼等の任務は「教導」すなわち、戦闘機部隊に対するコーチ・指導役です。

訓練の敵役=仮想敵を務めるだけでなく、相手の動きなどを分析して改善点を抽出、それを部隊訓練にフィードバックするという役割を担います。

まさに「現役戦闘機パイロットの教官役」なのです。

ここが凄い・飛行教導群

飛行教導群は訓練生ではなく実際に任務にあたっているパイロットを指導する教官役なので、当然高度な操縦技術を有している必要があります。

故に、全国の戦闘機パイロットでも選りすぐりの操縦技量を有しており、航空祭の展示飛行などでもその技量の高さは見て取ることが出来ます。

また、教官役なので、当然「教える」ことも求められます。
「相手に教えるということは、自分がその本質を理解していなければならない」
相手に何かを教えると言うことは、非常に高い理解度が求められるのです。
故に操縦技術が高いのみならず、それを論理的に高い水準で頭の中で考える事が求められます。

しかも自分も飛びながら(DJ型なら複座なので、どちらかは操縦する必要は無いですが)相手の動きを客観的視点で観察して、それを冷静沈着に分析することが求められます。
音速の世界で、最大8Gや9Gの掛かる中、自分と相手の機動を常に掌握して分析すると言うのは、恐ろしいまでの技量と知性を求められるでしょう。

更に彼等は「仮想敵役」なので、時に安全保障上の「仮想敵国」を演じることも求められます。

とにかく数多の能力が求められる、戦闘機パイロットの中でも、特別な存在なのです。

ド派手塗装は、なんのため?

飛行教導群の機体は、特別な塗装が施されており、一目でそれと分かる存在になっています。

これには当然、目的が存在します。

敵役であることを明確にして、混同を避ける

演習を行うのが、同じイーグルの場合、塗装が同じだと判別出来なくなります。
これを避けるために、あえてド派手な塗装で「敵役」を明確にしている。

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陸上自衛隊の評価支援隊などでも、同様の理由で戦車を別の迷彩パターンに塗っていたりします。

また、あえて目立つ塗装にすることで視認性を高め、自機の存在や機動を相手に分かりやすく伝え「こちらがAの機動を取った時に、何故そちらはBの機動を取ったのか」など、指導対象に対して分析を求めるという役割もあります。

カラービブス代わり

実際に飛行教導群がどんな訓練内容を行っているかは非公開ですが、状況によっては純粋に戦闘機だけではなく、対地・対艦攻撃機とエスコート機の複合編隊に対応する、などといったことも求められる自衛隊の戦闘機部隊ですから、様々なシチュエーションを想定した訓練を行っていると考えられます。

この際に「青の機体は戦闘機、黒の機体は対艦ミサイルを携行と想定」など、同じ機体で役割を分担させるために、様々なカラーをまとっていると考えられます。

コブラマークの意味

飛行隊のマークというと、空の猛者・鷲などの猛禽類(302sqのオジロワシなど)や、部隊の地元に所縁の深いもの(301sqのガマガエルなど)など、どちらかといえば愛着やカッコよさのイメージがありますが、飛行教導群のマークは

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航空自衛隊HPより
航空自衛隊HPより

どちらかと言えば「怖い」イメージの毒蛇コブラをマークにしています。

これには
「一撃の毒を以って、獲物を仕留める」
「常に周囲を警戒している」
など毒蛇コブラの強さを表していると同時に、その圧倒的な強さに対する畏怖の念を相手に抱かせるという意味が込められています。

教官役である飛行教導群は、他の戦闘機パイロットにとって「怖い」くらいの存在でないと務まらないのです。

またパイロットスーツにはドクロマークのワッペンを付けていたりもします。

 

飛行教導群は小松基地で見れるほか、各地の飛行場に年1回は飛来しています。
お近くの基地に飛来した際には、是非見に行ってみては。
(年間スケジュールがおおよそ決まっているようで、毎年大体同じ時期に飛来することが多いです)