軍用ヘリのスタンダード・UH-1
軍用ヘリのスタンダード UH-1
恐らく「自衛隊のヘリコプター」と言ったら、間違いなくこれを思い浮かべる人が多いでしょう。
UH-1多用途ヘリコプター。
現在自衛隊で使われているのはUH-1Jで、富士重工が製造しています。
保有機数は2016年現在で130機。
用途廃止機・事故損失機は恐らく未だ無いはずなので、全機現役だと思われます。
自衛隊の保有するヘリコプターの中ではダントツに数が多く、まさに最も身近なヘリコプターの一つです。
UH-1の歴史
UH-1の歴史は約半世紀遡り、ベトナム戦争時代の米陸軍機としてHU-1A型が採用された事から始まります。
(UH-1に名称変更されたのは、そこから数年後の命名規則改定の時です)
正式名称としては米国先住民に由来する「イロコイ」が与えられていますが、最初のHU-1で1をアルファベットのIと読み替えた「ヒューイ」も広く知られています。
(筆者もヒューイと呼ぶ派です)
その後、UH-1D型にモデルチェンジされた際に若干胴体を延長。
これが現在に至るまでのスタンダードなモデルとなり、更にエンジンを強化型に変更したUH-1Hが屈指のベストセラー機として約5000機が世界で導入されました。
UH-1Hは約1800kgの貨物、又は11名の歩兵or7~8名の歩兵にドアガンを積んで航続距離500kmを移動可能で各国の短距離空中輸送やヘリボーン作戦には不可欠な存在となっています。
シンプルな2枚ローターと単発エンジン、タフで信頼度の高いヒューイは、まさに軍用ヘリとして確固たる地位を築いているのです。
UH-1Nツインヒューイのコクピット。
ヘリもグラスコクピット化される事が多い中で、まさにシンプルイズザベスト。
また本来単発エンジンでしたが、より高性能化を目指す中で双発エンジンとされたものがUH-1Nツインヒューイとして導入されています。
エンジンの吸排気周りの構造が単発機とは、かなり違うのが見て取れるかと思います。
更にここからローターブレイドを4枚に変更した、ベル412シリーズが生まれ、最新型のUH-1Y ヴェノムが米海兵隊で運用されています。
自衛隊のUH-1
最初に自衛隊へUH-1が導入されたのはB型の時代で1960年代前半のことです。
その後1970年代前半にH型への切替が行われ、更に平成へ入ってからはエンジンの換装などを行ったJ型の調達が行われています。
最近H型が全機退役したとの話を聞いたので、現在使われている陸自用のUH-1は全てJ型だと思われます。
一時期、UH-60JAでUH-1を将来的に置き換えるという計画もあったのですが、これ1機でUH-1Jが3機買えるという、お財布事情もありキャンセルになったようです。
救助者を固定した担架を空中から収容
DMAT(災害派遣医療チーム)の支援
バケットを用いた空中消火
自衛隊で最も数の多い多用途ヘリコプターとして災害派遣任務に従事する事も多く、各地のイベントではホイストを使った要救助者の救出訓練や消防などとも連携した訓練を数多く行っています。
ちなみに陸自のUH-1ではホイストは普段搭載されておらず、必要な時だけ積み込む形のようです。
しかし、災害派遣の多いUH-1も本職は陸上自衛隊の航空部隊です。
第1空挺団やレンジャー隊員の空中機動力として演習では非常に激しい機動飛行を行う様子が見学できます。
また搭載武装・機器として
地雷散布装置
M2重機関銃(キャリバー50)
など、様々な搭載品を付けて、多種多様な任務に対応します。
まさに「多用途ヘリ」なのです。
余談ながら、UH-1、実は「飛ぶ」以外にも移動する方法があります。
実は大型トレーラーに乗っけて運ぶ事も出来るのです。
航空祭や駐屯地祭で、たまにこんな姿を見ることが出来ます。
UH-1の今後
自衛隊のUH-1Jは初期導入分が、既に20年に達している事もあり後継機計画が進んでいます。
導入が決まっているのは双発4枚ブレードのベル412をベースとした「UH-X」。
これにより自衛隊の多用途ヘリも4枚ブレードが標準となります。
名称はまだ発表されていませんが、米軍などの例を見る限り「UH-1」の名前は確実に残るでしょう。
2018年に初号機が納入予定ということですが、しばらくはUH-1Jと混在する形で、新しい4枚ブレードのヒューイを見る事になりそうです。
日本各地で見れるUH-1系列の機体解説記事は此方へ
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