航続距離を延ばすだけじゃない、空中給油の役割
お互いに空を飛行しながら、空中で燃料を補給する空中給油。
現在、航空自衛隊でもKC-767に続いてKC-46の導入も進められています。
一般には航続距離や滞空時間の延長を目的に行われる空中給油ですが、空中給油によって可能になることは必ずしも「長く飛ぶ」だけではありません。
今回は空中給油によって生じるメリットについて解説していきます。
兵装を限界まで増やして離陸できる
軍用機の重量は機体そのものの重量+搭載する燃料+搭載する兵装となりますが、一般的に「燃料も兵装も、どちらも限界まで積む」ということが出来ません。
これは全て積んだ際の重量よりも最大離陸重量、つまり離陸できる限界の重量が低く設定されているためです。
(主脚の耐荷重の問題など)
なので搭載する兵装を減らすか、航続距離を犠牲にして燃料を減らすか、そのバランスが求められます。
しかしこの制限はあくまでも「最大離陸重量」、即ち地上から離陸する際に生じる制限値です。
一度空に上がってしまえば、機体を支える脚も使わないので、この制限からは解放されます。
つまり燃料を少なめにして兵装を満載に→離陸後に燃料を補給すれば、兵装も燃料も限界近くまで積めるのです。
また、一般的に兵装と増槽はハードポイント(機体に外付け品を装着する接続部)が共用であり、兵装を積んだら増槽が積めないというのが一般的なため、増槽を減らして兵装にハードポイントを割り振るという意味でも、空中給油は兵装を増やすのに有効です。
また、軍用機は外付品が増えれば増えるほど空気抵抗が増えて燃費が悪化する→給油が必要、という観点もあります。
戦闘機から戦闘機へ、バディ給油
さて一般的に「空中給油」というとKC-767やKC-135などの旅客機サイズの大型機から戦闘機などの小型機へというイメージがありますが、実は小型機同士で空中給油を行うというパターンもあります。
アメリカ海軍のF/A-18などが実施するバディポッドを用いた給油が代表的な例です。
バディポッド搭載形態のスーパーホーネット。増槽4本を搭載して燃料を限界まで積み込んでいる。
何故、わざわざ戦闘機→戦闘機で給油するのか、と思われるかもしれませんが、空母の艦載機部隊では運用できる機体数・機種数に限りがある為、専属の空中給油機を用意するのが難しいのです。
過去には艦上対潜哨戒機のS-3ヴァイキングなども空中給油の役割が与えられていたこともあります。
なお、この空母艦載機部隊の空中給油について、米海軍ではMQ-25Aスティングレイという無人機にその役割を移す計画が進められており、戦闘機同士のバディ給油は将来的にその姿を消すかもしれません。
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