ダートサウンドよ永遠に。ダートエンジン搭載のYS-11、全て引退。

ダートサウンドよ永遠に。ダートエンジン搭載のYS-11、全て引退。

旅客機としては2006年に日本の空から引退していたYS-11。

衝突防止装置を搭載出来ないことが理由でしたが、自衛隊機ではこの規定が免除されるため、旅客機としては使えなくなったYS-11も引き続き使用されていました。

しかしエンジン部品の供給などから徐々に退役が進み、先日最後の1機が引退。

これを以てオリジナルのエンジンを積んだYS-11は日本の空から姿を消しました。


コミックマーケット献血応援イベント

ダートサウンドとは

YS-11にはロールス・ロイス社製のダートと言われるエンジンが搭載されています。

このダートのエンジン音は非常に独特で「ダートサウンド」と呼ばれ親しまれていました。

今回引退したYS-11FC・151号機は日本国内で運用されているYS-11として、このダートサウンドを響かせる最後の1機だったのです。

ダートYS-11退役へ

YS-11が旅客機としての役目を終えた後も、航空自衛隊にはオリジナルエンジンを積んだ機体として美保基地に輸送用のP型、航法訓練用のNT型、そして入間基地に飛行点検機仕様のFC型のYS-11が残っていました。

一番最初に引退したのはNT型で、更に2017年の5月に美保基地航空祭及びその後のあいち航空ミュージアム展示のための152号機によるラストフライトを以てP型は退役。

またこの頃、既に3機あった飛行点検機仕様のうちの1機である154号機が既に退役しており、残るダートYS-11は151号機と160号機の2機となっていました。

(2017年の航空祭では既に用途廃止機として解体を待っていたであろう154号機)

残り2機となったダートYS-11ですが2018年の秋ごろまでは151号機がIRAN(定期点検)に入っていたため、この時期は160号機のみがフライト。

2019年の入間航空祭には151号機がIRANから戻ってきていたため、最後のダートYS-11・2機による共演が見られるか?とも期待されましたが、残念ながら160号機の退役の方が早く、151号機はフライト・160号機は地上展示という形での最後の”共演”となってしまいました。

最後のダートYS-11・151号機

最後のダートYS-11となった151号機、実は航空自衛隊が保有していた機体の中でも一番古い機体で初飛行は1965年の2月。
日本では大塚製薬のオロナミンCが発売された時期という時代です。

151号機は元々152号機と同じP型として製造された機体でしたが、1992年にFC型へ改造。

それ以来およそ30年に亘り、日本の空の安全を守ってきました。

YS-11は機体構造そのものは非常に頑丈であり、入間基地からも近い所沢に展示されている元ANKの機体は飛行回数58000回、飛行時間52977時間ものフライトを行っています。
152号機は23872時間の飛行時間であったことから151号機も30000時間は超えていないと思われ、機体構造自体の寿命はまだまだ余裕があったと思われます。

しかしそれは「機体構造」の話、飛行機はエンジンに火が入らなければ飛ぶことは出来ません。
ダートサウンドを轟かせるダートエンジン自体が開発されたのが1947年ととてつもなく古く、航空自衛隊のダートYS-11も先に退役した機体から使える部品を再利用したり、国内のあらゆるところから調達を試みたりとかなり苦労されたようです。

後継機のU-680も予定通りに導入されたことで、YS-11FCの引退はいよいよ秒読みに。

2020年の入間航空祭が開催されていれば、最後の展示飛行の機体もあったのかもしれないと思うと残念です。

そして先日2021年3月17日、最後のフライトを無事に完了。
本当に長い間、お疲れさまでした。

YS-11自体は今後も飛び続ける

今回引退した151号機は「オリジナルのダートエンジンを積んだYS-11」として最後の1機でしたが、実は航空自衛隊にはまだYS-11が残っています。

エンジンを換装した、通称「スーパーYS-11」と呼ばれる機体です。

スーパーYS-11はP-2J哨戒機やUS-1A飛行艇に使われたT-64ターボプロップにエンジンが換装された機体で、電子戦訓練機仕様のYS-11EA、電波情報収集機のYS-11EBの2種類が今後も当面現役となる予定です。

(写真上がYS-11EA、下がYS-11EB。機体の上下についた大きな”コブ”の有無で判別可能)

これらの機体は電子作戦群に属していることから、航空祭など公の場に出てくることはありませんが、入間基地の夜間訓練飛行予定などで”YS-11″と表記されていることから、ある程度フライトの予定を知ることは可能です。

但し、最も古いYS-11EBの155号機では既に初飛行から50年が経過しており、搭載されているターボプロップ型のT-64も既にスーパーYS以外の搭載機は全て引退しているため官民問わずレアなエンジンとなってしまっています。

既に電波情報収集機の後継機であるRC-2の配備も始まっていることから、スーパーYSもその機数を減らしていくのは確実でしょう。

どうしても航空祭などには登場しない機体故に見れる機会は限られますが、正真正銘の最後の”YS-11″、その雄姿を見届けたいと思います。