豪州支援に輸送機派遣。何故C-130Hが選ばれるのか。
甚大な被害を出している豪州の大火災。
その支援の為に、航空自衛隊は小牧所属のC-130H輸送機を派遣しました。
豪州は東日本大震災に際して、動かせるだけのC-17輸送機を日本に差し向けてくれた恩義のある国。
その恩に報いるためにも、派遣されたC-130Hと隊員の皆様の活躍と無事を祈るところです。
さて、日本には現在C-2輸送機という最新式の輸送機もありますが、何故豪州派遣にC-130Hが選ばれたのか。
C-130Hハーキュリーズという、輸送機の強みと交えて解説していきます。
C-130とは
C-130Hはロッキード(現:ロッキイードマーティン)の開発した戦術輸送機で、その歴史はなんと第二次世界大戦終戦直後の1950年頃まで遡ります。
当時の輸送機は航空自衛隊でも活躍したC-47コマンドーなど旅客機と共通の設計のものが多く、尾輪式で貨物の搭載に難があったりと決して使い勝手のよいものではありませんでした。
この扉から荷物を搭載する。当然、大型の貨物の積み込みは難しい。
そこで、戦後を担う新世代の輸送機として陸軍と空軍の統合要求書(当時としては画期的な試みでした)に基づき、設計されたのがロッキード社のL-206というプラン。これがC-130となります。
非常に画期的な輸送機で、軍用輸送機のスタンダードスタイルは本機で確立されて未だにこれを超えるものが無いと言われるほどです
(詳細はこちらの記事を)
故に、西側諸国ではC-130シリーズは『標準装備』と言えるほどに定着。
運用国は70カ国、生産数は3000機を超えていて、西側国で逆にC-130を運用していない国の方が珍しいと言っても過言ではありません。
C-130の強み
C-130はターボプロップ機故に飛行速度や巡航距離の面ではジェット輸送機には劣るものの、輸送能力・不整地運用能力など優れた機体であると同時に、西側諸国では『標準装備』と言えるほどの存在であることが大きな強みです。
飛行機による輸送は、飛行機を飛ばせばOKというものでもありません。
まず飛ばす前の段階として、様々な下調べ・調査が必要になります。
離着陸するのに滑走路の長さは足りているのか、滑走路や誘導路は機体の重さに耐えられるかなど、必要な基準を満たしていなければ飛行機を運用することは出来ません。
平行誘導路が無い場合、滑走路上で上の画像のようにUターンすることもありますが、当然最小回転半径分の幅が無ければUターンすることも不可能です。
また輸送するための物資は飛行場まで何らかの手段で運び込むか、あるいは外国から持ってくるのであれば航空基地や空港で積み替える必要があります。
積み込みの際にはホイールローダーを準備したり、マンパワーで積み込む場合には人員の配置を計画する必要もしなくてはなりません。
更に燃料の備蓄や給油車両の運用も不可欠です。
更に目的地まで運んだら、今度は荷下ろしやら目的地への輸送のための手配をしておかないと、せっかく到着した輸送機が延々と荷物を下ろせずに待ちぼうけということも起こりえます。
航空輸送は事前の準備から始まり、地上支援や他の輸送手段と組み合わせた巨大な『輸送計画』の一部として運用されるのです。
先ほども書いた通り、C-130は世界中で運用実績があり豪州でも過去にC-130H、現在はC-130Jを運用しています。
つまり豪州にとってもC-130は『運用に慣れている』機体なのです。
また今後、世界各国から支援が駆けつける中で『西側諸国の標準装備』とも言えるC-130は、お互いにその運用方法や特性を理解しあっている非常に都合の良い輸送機ともなります。
逆にC-2輸送機は海外での訓練実績もまだ乏しく、豪州にとっても一から調べなくてはならないところが多くなると思われます。
C-2が必要になるような場面では、豪州空軍自身が保有するC-17輸送機や、C-17を運用する各国からの支援の方が彼らにとってはありがたいでしょう。
401飛行隊の強み
C-130という機体にこのような強みがある為、航空自衛隊でC-130Hを運用する401飛行隊も度々海外での任務に従事してきました。
2018年にはインドネシア地震、2015年にはフィリピンの台風被害、2010年にはハイチ地震やパキスタンの洪水など、その活動回数は非常に多く、部隊として海外での活動実績のノウハウが蓄積されています。
海外での活動となると現地機関との調整業務が生じたり、また日本での運用とは異なる面が生じたりと、やはりノウハウが生かされる場面が多いでしょう。
機体の利点のみならず、『海外派遣に慣れている』という点でも401飛行隊と彼らが運用するC-130Hが航空自衛隊で最も海外への災害派遣向けの輸送機であると言えます。
最後になりますが、豪州に向かわれた401飛行隊の皆様の任務の無事をお祈り致します。
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