護衛艦のマストには何が付いてる?艦の目となるレーダーたち

護衛艦のマストには何が付いてる?艦の目となるレーダーたち

護衛艦の中でも一際目立つ「マスト」

高くそびえるマストには、平たいものやら丸いものやら、色々な機器が取り付けられています。

あのマストに付いている機器は、一体どんな役割を果たしているのか。

解説していきます。


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そもそも何故マストがいる?

船の艦橋よりも遥かに高い位置まで伸びているマスト。

そもそも何故、船にあんな高いものを取り付けなければならないのか。

答えは「地球が丸いから」。

ミサイルが無く主砲による艦砲射撃が主だった時代にも艦橋・見張り台が高い位置に取り付けられていましたが、何処まで見張れるかというのは水面からの高さにより大きく変わります。

例えば高さが5mの場所にいる時、水平線は約8km先ですが、これが10mなら約11km、20mなら約16kmと高い位置にいればいるほど、地球の丸さに影響されず遠くを見渡すことが出来るのです。

その後、時代は目視による索敵からレーダーへと変化しましたが、レーダーの電波も直進性が高いため、出来る限り高い位置に設置されているほど敵を遠くで探知することが可能になります。

それ故、船にマストという背の高い構造物を作ることで、少しでも水面から高い位置に船にとっての「眼」を設置しているのです。

艦載ヘリの道標
TACAN

マストの一番最上部に設置されている、円盤のような形の物体。

これは何かを探すためのレーダーではなく、逆に自分の位置を周りに教えるためのもので「TACAN」と呼ばれます。

この円盤からは、周囲に対して「どの方向にいるか?どれくらい距離が離れているか?」という情報を送信する事が出来ます。

これを受け取る相手は、護衛艦に搭載されるSH-60などの艦載ヘリコプター達が主です。

広い大海原では、何も目標にするものがありません。また空港やヘリポートと違って船は移動してしまいます。
そのため、艦載ヘリが洋上で帰り道を見失わないように、また作戦行動時にお互いの位置関係を把握しやすくするため、このTACANが道標として活躍するのです。

TACANの詳しい解説は↑の記事で

平たい棒状は
水上レーダー

マストに設置されている棒状の物体。

これは対水上用のレーダーで、主に周辺の艦艇を捜索するために使用されます。
護衛艦で使用されている代表的なものではOPS-28などです。

公船・商船など船に一般的に装備されている見張り用のレーダーと中身は大差ありません。

なお対水上捜索用のレーダーに加えて、航海用のレーダーを別で備えている艦もあります。

空を見張る
対空レーダー

航空機や、そこから放たれるミサイルが船にとって大きな脅威となる現代、空の見張りは欠かすことが出来ません。

これら空の脅威を見張るためのレーダーが対空レーダーですが、時代によって形状が大きく異なります。

あさぎり型の『はまぎり』より以前の護衛艦ではOPS-14という大きなパラボラアンテナのようなレーダーが設置されています。

その後、あさぎり型の『はまぎり』以降、むささめ型、たかなみ型ではOPS-24という平たい板状のレーダーに変更になりました。
この平たい板は、アクティブフェーズドアレイレーダー(レーダー自体の方向を変えるのではなく位相・波長を変化させて捜索方向を変える)となっており、自在に捜索する仰角=高度を変えることが可能です。

さらに、あきづき型・あさひ型では、FCS-3(FCSは射撃管制装置のこと)に変更され、マストではなく艦橋の上に四角い板状のものを貼り付ける形になりました(1面に2つあるが、対空レーダーは大きい方。小さいものは後述する射撃管制レーダー)

先のOPS-24ではレーダーの面を回転させて水平方向、レーダーの位相により上下方向の見張りを行いましたが、FCS-3では回転せずとも水平・上下を自在に見張ることが出来ます。

射撃指揮装置

対空レーダーで発見した相手に対して、更に詳細な狙いを定めてミサイルや主砲を撃ち込むための設備が射撃指揮装置です。

たかなみ型までの護衛艦ではFCS-2という形式が採用されており、マストの低い位置、中央に円盤状のレーダーが設置されています。

またあきづき型以降はFCS-3へ変更となり、対空レーダーと並んで射撃指揮用のレーダーも設置されています(小さいほうが射撃指揮用)

 

実のところ、今回紹介したのはマストに付いている設備の極々一部でしかありません。他にも通信用の設備や艦を守るための妨害装置なども付いています。

しかし、全てを紹介するには長くなりすぎてしまいますので、そちらはまた違う機会に書かせていただければと思います。