【雑学】チヌークの離着陸に必要な面積
圧倒的な積載量を誇る軍用の大型輸送ヘリコプター。
その輸送能力は大型トラック丸ごと1台分にも匹敵し、人員・物資の輸送において欠かせない能力です。
しかし、その大柄な機体を運用するには当然それなりの面積が必要になります。
今回はCH-47チヌークを例に、大型輸送ヘリの運用に必要な面積について解説していきます。
※能登半島震災を受け、この記事が多方面に引用されていることを知りました。
記事自体が5年以上前ということ、また『雑学』のタイトル通り軽い気で書いた記事ですが、これを機に内容をアップデートします。
2024年1月10日 筆者
機体はどれだけ大きい?
CH-47Jの場合、機体の胴体部分だけを見れば全長は約15m、全幅は5mにも満たない程度ですが、その大きなローターの回転直径は約18mに達します。
ローターを含めた大きさとなると、全幅はローター回転直径と同じ約18m、全長は30mを超えます。
なので機体を「置いておく」だけでも縦30m、横20m近い敷地が必要です。
またヘリコプター全般に言えることですが、特にチヌークの場合はローターブレードの先端が非常に低い位置まで下がります。
その高さは一般的な成人の頭の位置よりも低く、接触事故を避けるためには十分なスペースの確保が不可欠となります。
チヌークのローターは低いところで130cmくらいまで下がる。
その為、特に機体前方への接近は非常に危険となる。
どれくらいの広さが必要?
では、実際にチヌークの運用にどれくらいの面積が必要か?
色々と資料を探してみたところ、鳥取県の自衛隊災害派遣に関する資料の中に、自衛隊のヘリを災派で運用する場合についての記述がありました。
それによると大型輸送ヘリコプターの離着陸に必要な面積は、最低でも100m四方とのこと。
リンク先:鳥取県:自衛隊災害派遣要請の概要
国際試合仕様のサッカーのコートが長さ100~110m、幅が64~75mだそうなので、長さは足りるものの幅が不足していることになります。
サッカーコートを丸ごと使っても、まだ足りないと考えると、如何に広大な面積が必要かが感じ取れます。
同じ資料よりUH-60J/JAの場合には30m×36mとのことで、大型ヘリの場合には縦横ともに3倍以上、面積では10倍近い広さが必要ということになります。
但し、此方の資料少し古いようで同じ鳥取県の自衛隊受援計画として公表されている最新版では航空機(回転翼)の着陸地点及び無障害地帯の基準として、以下の図が示されています。
鳥取県の危機管理:自衛隊受援計画 6 航空機(回転翼)の着陸地点及び無障害地帯の基準[PDF:25KB] より引用
これによれば、100m四方ではなく45m四方が着陸帯として求められています。
先ほど書いた通りチヌークの全長は30mほどなので、このスペースがあれば着陸自体は可能です。
但し同じ図を見て分かる通り、単純にこの面積の平地があれば良いというわけではなく周囲の障害物の有無も関わってきます。
意外かもしれませんが、ヘリコプターは「垂直に降下する」ことが苦手で、ゆっくり前進しながら徐々に高度を落とす必要があります。
(セットリング・ウィズ・パワーと呼ばれ、自身の機体が起こした空気の流れに入ってしまうこと。墜落の危険もある非常に危険な状態)
気象条件・飛行条件などにも左右されますが、可能な限り周りが開けている場所の方が安全に着陸できるのです。
また電線・ワイヤーなどはヘリにとって巻き込むと即墜落に繋がる致命的な存在となるため極力そういったものがある場所も避ける必要があります。
他にもダウンウオッシュによる飛散物の影響、砂地の場合は砂塵対策(事前の散水など)、更には大型ヘリだと自重だけで10トン、燃料と貨物満載で20トンになる重量に耐えられる地盤か否かなど、ヘリコプターの着陸地点は想像以上に制約が大きいのです。
こういった事情があるため災害派遣の際には予め都道府県側が事前に調査・選定した運用拠点を用いるのが一般的となります。
一見着陸できそうな場所でも、ヘリコプターの運用という観点からはいがいな要素が障害となる可能性があるのです。
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