偵察部隊の頼れる脚 偵察用オートバイ
高い走破性能と自動車以上の機動性を誇るオフロードバイク。
陸上自衛隊においてもオートバイ(偵察用)として導入され、主に偵察隊などの脚として活躍しています。
バイクの配備先は
陸上自衛隊でバイクを用いるのは主に機甲科職種である「偵察隊」と、普通科の本部中隊にある「情報小隊」です。
前者は師団直属の偵察部隊として、後者は連隊などの指揮官の「眼」となるべくオートバイの機動性を生かして活躍します。
なお機甲科の隊員さんに聞いたところ、同じ機甲科職種でも戦車乗員と偵察隊は完全に別の特技であり、戦車乗員が偵察隊に配属される(そもそも、これ自体がまず無いらしい)なら、特技教育からやり直しになるとのこと。
陸自が使用しているオートバイ
陸自が導入しているオートバイは、専用品ではなく民間でも販売されている車体に改造を加えたもの。
ただし何でもいいというわけではなく、陸自側から以下の通り調達仕様が定められています。
- 市販のオフロードタイプのオートバイ
- 排気量は公称250cc
- エンジン形式は4ストローク単気筒
なので、必然的に車種は決まってきます。
平成28年度に導入された車体はカワサキモータースジャパンが納入業者となっていますので、ベース車両はカワサキ製KLX250です。
他にセルスタート方式であることや、6速シフトであることが定められていたり、タイヤサイズやエンジン出力についても指定があります。
市販車からの改造点
見た目で分かる違いとしては
- ヘッドライトのガードを追加
- フロント用転倒ガードの追加
- リア用転倒ガードの追加
- 無線機ラックの追加
- リアキャリアの追加
などが挙げられます。
ちなみにOD色の塗装は自衛隊側で塗っているわけではなく、塗装指定に基づきメーカー側の生産過程で塗られたものになります。
また現在の国内のバイクは常時ライト点灯状態となっていますが、自衛隊仕様ではいわゆる灯火管制(敵からの発見を防ぐため、最低限の灯火で移動する)を想定して、ボタン1つで管制灯のみ点灯の状態に移行できるようになっているそうです。
真ん中のつまみのような部品が灯火管制用のスイッチかと思われます。
お値段は?
平成28年度調達価格によると偵察用オートバイ1台のお値段は
102万5000円(税抜)
KLX250の新車価格が50万円強なので、ベース車両と比較すると、かなりお高くなっているようです。
1年あたりの導入数が少なく、また改造箇所が多いために手間の掛かる部分が多いので、1台あたりがどうしても高くなるのかもしれませんね。
中古で手に入る?
正規のルートで自衛隊の、いわゆる払い下げ品が出回ることは「無い」と断言出来ます。
自衛隊の装備品は一部を除いて、車両としてではなくスクラップ扱いで売却されるためです。
あの手この手で「組み上げる」ことは出来るのかもしれませんが、何かとグレーな部分も多いのに加え、バイク1台オーバーホールを自力で出来るくらいの知識・技術と掛かる時間や費用を考えればベースの市販車を買ってそれっぽく改造する方が遥かに効率的かと。
今後の偵察用オートバイ事情はどうなる
昨今、バイク業界ではいわゆる環境規制の影響で続々と生産終了が相次いでおり、KLX250も実はその1つです。
今後、新型の開発の噂もありますが、現在国内モデルで偵察用オートバイの基準を満たせるのは恐らくホンダのCRF250だけかと思います。
ただCRF250も、いわゆるPGM-FIなどの搭載で機構が複雑化しています。
今後の環境規制対応には同様にキャブレーターではなく、より複雑なインジェクションの導入が不可避と思われますが、これが軍用車両に適するかどうかと言われると悩みどころかと。
(現行のKLX250もFI化はされています)
あくまでも「市販車」であれば良いとして、競技モデルをベースにするという手もあるかもしれませぬが、来年以降どうなることか。気になるところであります。
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