独特の魅力 2.5世代戦車 74式
陸上自衛隊には平成28年3月現在で690両の戦車が存在します。
そのうち、最も数が多いのは90式で341両。
最新式の10式は現在約80両が配備されているのみです。
残りのおよそ270両前後は、今もなお74式戦車が担っています。
今回は第3世代戦車とは違った独特の魅力を持つ、74式戦車の紹介です。
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2.5世代戦車 74式
第二次世界大戦後の主力戦車(MBT)を大きく分けると、第1~第3.5世代まで存在し、このうち74式は第2.5世代に相当します。
陸上自衛隊では戦後、61式戦車を初代の国産主力戦車として開発・調達しましたが、1960年代には世界各国で、既により強力な火砲と装甲を備えた第2世代主力戦車の開発に着手しており、極東情勢の緊張が深まる中、61式では有事に備えることが難しい状態でした。
(61式は主力戦車としては第1世代、センチュリオンなどと同じレベルです)
そこで61式の開発完了後、直ちに「諸国の第2世代主力戦車相当の国産戦車開発」としてスタートしたのが、74式戦車の開発計画で、名前の通り1974年より調達が開始されています。
第3世代戦車との大きな違いとして、その形状が挙げられます。
第3世代以降の戦車は複合装甲の採用により、直線的なデザインが多くなりましたが、それ以前の防御装甲は鉄鋼が主流でした。
このため、避弾経始=砲弾に対して装甲を斜めにすることで、防御能力を向上させる考え方が採用されており、これが2.5世代戦車の見た目における大きな特徴となっています。
並べてみると、その違いがよく分かると思います。
(左・74式、右10式)
また戦車砲も、120mm滑腔砲ではなく、105mmライフル砲が採用されています。
105mmライフル砲は16式機動戦闘車でも採用されており、74式用の弾薬は16式機動戦闘車でも使用可能と言われています。
74式戦車ならではの特徴として、油気圧サスペンションシステムによる姿勢制御があります。
これは地面の傾斜に合わせて、車体そのものの姿勢を変更できるという機能で、当時の主力戦車では、特異的な機能でした。
これは傾斜の多い日本で、かつ専守防衛のため待ち伏せによる戦闘が大きく考慮されたものと言われています。
この機能は90式では左右の調整機能が省かれましたが、10式で再度、前後左右に調整可能な機構が採用されました。
74式の動画は無いのですが、前後左右の姿勢制御がどのようなものか、こちらの動画でどうぞ
また近年では珍しい装備として、この大きな箱状のアクティブ暗視装置があります。
現在の暗視装置はパッシブ、即ち照射されている微量の熱源・光源を受信機側で増幅するのが主流ですが、当時はそこまでの技術が無かったため、逆に強力な光源を用いて赤外線を照射して前方を「照らす」のが主流だったのです。
個人的に、このアクティブ監視装置付きの74式は、丸い車体にゴツゴツ感がたまらないので、陸自の戦車でも、このタイプが一番好きです。
74式の今後
先ほども書いたとおり、現在残っている74式戦車はおよそ270両と推測されます。
(90式の用途廃止が無いと仮定して)
850両以上が生産されているため、既に600両近くが現役を退いている計算です。
朝霞に展示されている74式の銘板。昭和52年=1977年とある。
先ほども書いたとおり、74式の装甲は複合装甲などが使われておらず、また主力戦車としては105mm砲は既に陳腐化していると言わざるを得ません。
「敵戦車を撃破して、かつ戦車砲に耐える」ことを求められる主力戦車において、74式は既に、その役目を果たしているとは言えない状態でしょう。
74式の後継は10式及び機動戦闘車が担っていくことになります。
機動戦闘車の調達ペースが現在年間30~35両ほど、10式は年間6両が調達されています。
防衛大網により戦車定数削減とされていることから、既存の74式を全て置き換える可能性は低く、74式の引退がいつ頃になるのか、現状は不明です。
ただし61式が2000年に引退していることを考えると、既にいつ引退してもおかしくないと思います。
74式が引退すると戦車は北海道・九州への集中配備が予定されていることから、本州四国では戦車そのものが近くで見れなくなりますので、見れるうちに見ておきましょう。
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