単射・並射・速射・連射 「射撃」にも色々ある

単射・並射・速射・連射 「射撃」にも色々ある

銃や砲を撃つのを「射撃」と言いますが、連射・単射・斉射etc…

一口に「射撃」と言っても、その撃ち方は様々。

しかし統率した行動が求められる軍事の世界において「命令する側」と「命令される側」が、同じ言葉に同じ認識を持っていないと、想定より早く弾切れを起こして部隊が危機的な状況に陥ったり、最悪のケースでは同士討ちも起こりえます。

このような事態を防ぐため、自衛隊に限らず、軍隊では使用する用語を共通化しておくのが一般的です。

防衛省だと

防衛省規格Y0005B 火器用語(射撃)

がこれにあたります。

どの言葉が、どんな意味なのか。
一部を規格書より抜粋して紹介します。

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ちなみに、そもそも「射撃」の定義から説明しておくと

射撃
火器に射撃諸元( 方向, 射角など) を与えて弾丸などを発射すること。

以下、下線部においては防衛省の規定書より引用です。

射撃速度に関するもの

単射

火器において1発ずつ発射する射撃。
但し小火器においては、半自動式に適用する。

並射

機関銃の持続発射速度による射撃。通常6発程度。

機関銃を一定の秒数「ダダダダダ…」間隔を置いて、再度「ダダダダダ…」と撃つ状況をよく見かけますが、あれのことです。

ちなみに持続発射速度とは「小火器の機能に影響を及ぼすことなく,続けて発射できる最大の発射速度」となっています。
つまり通常において使用するのは「並射」までで、これ以上はイレギュラーな射撃と言えます。

速射

機関銃の持続発射速度を超える射撃。通常10発程度。

銃身のオーバーヒートやジャム(装填不良)のリスクを背負ってでも、火力を集中する為の射撃と言えます。

連射

全自動火器において, 射撃操作中は, 発射が連続する射撃。

いわゆる「フルオート」ですね。

射撃形態に関わるもの

斉射

1. 近接する2 門以上の火器で同時に行う射撃

2. 同一目標に対し同一砲種2 門以上を使用して同時又はほとんど同時に発射す
る射撃

英語だと「Salvo!」で、時折「撃てる武装を全て撃つ」という解説を見かけますが、自衛隊においては「2門以上の同時射撃」のことを「斉射」と定義しています。

ちなみに並んでいる火器が、並んでいる順番に順次撃っていくのは翼次射。
ただ、これも英語訳は「salvo fire」なので、ややこしいです。

なお、斉射に対して、各個が独自に射撃することを「各個射」と呼びます。

同時弾着射撃

目標に複数弾を同時に弾着させる射撃

総火演で「TOT ○秒前!」とアナウンスがありますが、このTOTがTime on targetで、同時弾着射撃の略語です。

特殊な射撃

突撃破砕射撃

敵機甲部隊の突撃を破砕するために計画した対機甲突撃破砕射撃と敵徒歩部隊の突撃を破砕するため, 視界のいかんにかかわらず射撃できるように準備した機関銃, 砲迫の弾幕射撃などからなる対歩兵突撃破砕射撃がある。

また「弾幕射撃」については

徒歩部隊を主体とする敵の突撃を粉砕するため, あらかじめ精密な射撃諸元を準備し, 要求によって機を失せず射撃できるように戦闘陣地( 拠点を含む) の直前などに設ける砲迫火力の防壁を構成するための射撃

即ち、敵が自陣へ突撃を仕掛けてきた際に、最終防御線(突撃破砕線)を超えさせないために、機関銃や迫撃砲を用いて防御線を死守するための射撃です。

軍事用語だとfinal protective fireで「最終防護射撃」とも言われますが、防衛省の用語においては同じ英語に対して「突撃破砕射撃」が充てられています。

じょう( 擾) 乱射撃

指揮所, 宿営地, 集結地, 補給施設, 交通上の要点など重要な地域に所在する敵に対し, 安んじて業務遂行, 休息などができないように混乱させ, 敵の士気を低下させるための射撃

簡単に言ってしまえば「敵への嫌がらせ」です。
銃音が鳴り響けば、当たる当たらないは別にしても、敵は戦闘態勢を整えざるをえませんし、近くで爆発音でもすれば睡眠もなかなか取れなくなります。
何より「敵がいつ来るか分からない」という緊張感を相手に与える事で精神的な余裕を削っていくという、地味ながら長期的に見ると敵指揮官にとっては嫌な状況です。

 

この他にも、A4用紙で何十枚という膨大な量の用語が定義されているのですが、全てを紹介するのは難しいです。

興味のある方は防衛省などのHPから情報が公開されていますので、検索してみてください。