晴れていても飛べないかも?ブルーインパルスの飛行に必要な雲底高度とは
各地で華麗な飛行を見せてくれるブルーインパルス。
青空を背に白いスモークを引く姿は美しく、願わくば晴天でその飛行を見たいところですが、そこはお天道様次第。
さて、ブルーインパルスの飛行当日、運良く天気に恵まれても必ずしもフライトが予定通り行われるとは限りません。
ブルーインパルスの飛行には普段の天気予報では全く見ない航空気象の条件も含まれるからです。
ブルーインパルスの飛行は”雲”が大きく関わる
ブルーインパルスの曲技飛行は原則として有視界飛行、すなわち飛行中は周囲をパイロットが目視で安全を確認する形で進められます。
そのため視界の妨げになるものが存在する場合、その飛行には大きな制約が出ることになります。
空を飛ぶ飛行機にとって視界を妨げる大きな存在が「雲」
雲の向こう側は見渡すことが出来ませんし、雲の中に入ってしまえば濃霧の中に突入したように視界は一瞬で奪われてしまいます。
(なおブルーインパルスに限らず、一般的な飛行機の運航でも有視界飛行では雲の中に入ることや雲に近づくことは厳禁です)
そのため、ブルーインパルスのフライトを実施する際には飛行空域に障害となる雲があるか否かが重要になります。
シーリング・雲底高度とは
この雲の状態を判定する上で重要になるのがシーリング・雲底高度と呼ばれる気象情報。
雲底高度とは、そのエリアの大部分を覆う雲の「底」になる高度のことで、要はその高度から上には雲があるという値です。
(目安として空域の5/8、6割ほど)
ブルーインパルスの飛行ではこの雲底高度により、各種の制約が課されます。
例えば航空祭などで行われるループ・宙返りなど上下方向にも激しい動きを行う飛行ですが、もっとも制約が無い第1区分と呼ばれる課目を全て実施するには雲底高度10000フィートと3000m級の山より高いところまで雲が無いことが求められます。
5番機が勢いをつけてロールしながら急上昇するバーティカル・クライムロール。
到達高度は9000フィート近くにも達する。
そこを基準に、雲底が下がるほど垂直方向の制限が厳しくなり「水平課目」と言われる、高度をあまり変化させない課目が増えていきます。
どれだけ課目を制限しても限界の高度がある
高度の制限が厳しくなればなるほど実施できる課目が限られ、最終的には「航過飛行」「第5区分」と呼ばれる会場上空でフォーメーションを組んでまっすぐ飛行する課目が実施されますが、これでも実施できる最低限の基準が定められています。
この最低限のフライトを実施するのに必要なのが雲底高度1500フィート、併せて視程5km以上という条件で、これがブルーインパルスが飛行を実施するか否かの限界の基準となります。
(航空祭では地上滑走(タキシング)だけ実施したりすることもあります)
但し、あくまでも基準の1つであり、実際に飛行展示、特にイベントや記念行事などで会場の上空などを飛ぶ「リモート展示」と呼ばれる形態の場合は、その飛行ごとに計画・許可された高度制限などもあるため、その高度で視界が確保出来なければ飛ばないということもあり得ますし、会場上空は雲1つ無い晴天でもその周り(計画している飛行ルート上)に雲があるというパターンもあります。
最終的には編隊に先行して周辺空域を確認する気象偵察機からの報告やら地上からの支援情報なども加味して、実施課目の変更なども含めて隊長の判断です。
雲底高度って調べられるの?
最初に書いた通り一般の気象予報やお天気アプリなどでこの情報が出てくることはありません。
しかし誰でも閲覧できる情報として、気象庁が公開している航空気象情報があります。
https://www.data.jma.go.jp/airinfo/index.html
(気象庁・航空気象情報)
またMETARという、各空港で発表される気象観測データも公開されています。
飛行場での展示飛行や会場周辺に空港・飛行場がある場合に限られますが、調べることは可能です。
ちなみにMETARはこんな
METAR RJTT 290530Z 12007KT 9999 FEW025 BKN/// 27/21 Q1009 NOSIG RMK 1CU025 A2979=
暗号のような文章になっていますが
https://www.jma-net.go.jp/naha-airport/metar_taf.html
(那覇航空測候所・METARとTAF)
など分かりやすい解説もありますので、一度覚えてしまえば雲底や視界だけでも読み解くことはそれほど苦ではありません。
ちなみに今回はブルーインパルスの解説でしたが、このような航空気象の条件は航空祭での戦闘機等の飛行でも大きな参考となります。
航空祭やブルーインパルスの展示飛行が増えるシーズンを前に、覚えてみるのはどうでしょうか。
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