【雑学】音速で飛ぶ鳥はいない。ステルス機も真っすぐ飛んでると発見される?
航空自衛隊に配備の進むF-35A戦闘機。
レーダーに映りにくい、いわゆる「ステルス戦闘機」ですが、どれだけ優れたステルス戦闘機も完全にレーダーから姿を消せるわけではありません。
今回はステルス機でもレーダーに見つかってしまう理由を解説していきます。
ステルス機はレーダーに「映りにくい」
戦闘機や爆撃機がどれだけレーダーに映りにくいか、という指標の1つとしてRCS(レーダー反射断面積)、すなわち機体がどれだけ大きくレーダーに映ってしまうかという数値があります。
第4世代戦闘機のF-15が10~25平方メートルであるのに対して、F-35Aは最大でも0.005平方メートル、すなわちおおよそ7cm四方。
これはよく「鳥と同じくらい」と言われています。
なのでステルス機であっても、レーダーには鳥と同じくらいには映ってしまうのです。
レーダーの信号は「処理」される
対して敵機を探すレーダーは反射してきた電波を元にしますが、現代のレーダーは基本的に反射してきた電波をそのまま表示する仕様にはなっていません。
何故かというと、全ての電波をスコープに映してしまうと、あまりに不要な情報が多すぎるのです。
この一番分かりやすい例がレーダーの「ルックダウン」、即ち自機よりも低い位置を飛んでいる相手を探す能力です。
仮に反射したレーダー波を全て表示すると、地面から跳ね返ってきたレーダー波で画面は埋め尽くされてしまいます。
航空自衛隊ではMiG-25亡命事件の際に、低空を飛ぶMiGを捕捉出来なかった手痛い教訓からルックダウン能力を有するE-2早期警戒機の導入が進められた。
これを処理する為には「ドップラー効果」を活用します。
救急車のサイレンが近づくのと遠ざかるので違って聞こえる、あの効果です。
サイレンは「音波」でレーダーは「電磁波」ですが、同じ波である以上レーダーにもドップラー効果はあり、止まっている目標と動いている目標では反射する電波の周波数が変化します。
これにより「止まっている目標の周波数」を除去することで、地面や地上構造物からの反射波を排除、レーダー画面にそれらを写さないことが出来るというわけです。
音速で飛ぶ鳥はいない
地面や地上構造物と同様に、明らかに飛行機よりも小さな対象を全て画面に写すわけにもいかないので、弱い電波は除去されます。
先ほどステルス機のRCSを「鳥と同じくらい」と書きましたが、ステルス機と自然の鳥類とでは全く異なる点があります。
空を飛ぶ“速度”です
自然界にジェット戦闘機並みの速度で飛ぶ鳥がいるわけがありません。
なのでレーダー側で「鳥くらい小さな目標でも、明らかに異常な速度で飛んでる対象」は取り除かないよう処理されれば、ステルス機も理論上は発見可能となるわけです。もっともこれを実現するにはレーダー側にも高度な情報処理・演算能力が必要となりますが。
ただしこれが可能となるのは捜索対象が比較的シンプルな動きをしている場合で、ランダムな動きを繰り返している対象が相手になると「音速で飛ぶ鳥」ではなく「不規則に現れるノイズ」と認識する可能性があります。
ステルスは”迷彩”に近い
以上のことからステルス機の能力というのは、いわば人間の視覚を欺く”迷彩”に近いものであるといえます。
どれだけ背景に溶け込む迷彩であっても、そこから消えているわけではありません。露出する面積を小さくしたり暗色などを使って光に反射しにくくしても、人間の目には必ず相手が「光学的には」見えているはずです。
(SFのような透明マントでもあれば別かもしれませんが)
ではなぜ迷彩を施した相手を見つけることが出来ないのかというと「脳が相手をそこにいると認識できないから」
電波的なステルスの場合、人間の目に届く「光」にあたる部分がレーダー波、そして脳にあたるのがレーダーの処理演算端末、騙しているのは「目」ではなくて「脳」ということです。
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