【空想ミリタリー科学】戦闘機のエンジンで『換気』したらどうなる?
感染症対策で重要性が叫ばれている「換気」
筆者は空調機器のメンテナンスが生業なので、家庭用の換気扇みたいなものからビル一棟丸ごと排気するような巨大なファンまで色々と扱っていますが、更に巨大なファンならどれくらいの換気効果があるのか。
巨大なファン・・・例えば「戦闘機のエンジン」ならどうだろうかと。
と、いうわけで今回は「戦闘機のエンジンで換気するとどうなる?」というおバカ企画です。
F-4EJ改・J79エンジン
戦闘機のエンジンがどれくらいの空気を吸い込むのか、当然エンジンの出力などにもよりますがここでは航空祭などで空自さんが解説で出しているパネルの値を参考値としていきましょう。
まず最初は、間もなく退役を迎えるF-4EJ改・通称ファントムに搭載されたJ79エンジン。
現在主流となっているターボファンとは異なり、燃焼排気100%のピュアジェットです。
ではJ79は一体どれだけの空気を吸い込んでいるのか。
百里基地航空祭に展示されていたパネルによれば
77kgとのこと。
ちなみに単位は毎分ではなく『毎秒』です。
つまり1秒あたりに77kgの空気が流れていることになります。
空気の密度は温度・圧力により大きく変わりますが、ここでは1気圧・20℃の1立方メートルあたり1.166kgとしましょう。
この値を用いると77kgの空気は÷1.166でおよそ66立方メートルとなります。
天井を2メートルとすると、上のパネルにもありますがおよそ18畳=32.8平方メートルの部屋の容積。
つまり、J79エンジンの空気流量は「18畳の部屋を1秒で換気する」ということになります。
繰り返しますが単位は「秒(sec)」です、「分(min)」ではありません。
F-15用 F-100エンジン
J79エンジンを更に上回る大出力を誇るのが、F-15J/DJに搭載されているF-100エンジン。
F-100-IHI-220Eというモデルのスペックを見ると空気吸入量は1秒あたり100.35kg
先ほどと同じ密度を使うと、およそ86立方メートルとなります。
畳数でいうと23畳半ということになりますが、23畳半の部屋が『1秒』で換気といっても現実感が無いですね。
では、もっと大きな空間ならどうか。
数々のイベントが開催される東京ビッグサイト、その東棟を例に見てみましょう。
ビッグサイト東展示棟の東1ホールを例に取ると床面積は8670平方メートル、天井高さはバラつきがあるようですが一番低いところで17メートルということなのでこれを採用すると、容積はおよそ147390立方メートル。
F-100エンジンの空気流量で割ると約1675(秒)となります。
流石にかかりすぎですね。
ではF-15らしく双発にしてみましょう。
それぞれのエンジンが干渉せずにお互い最大量の空気を取り込めるとして、純粋に2倍しておよそ837秒。
分単位に直すと約14分。1時間で4回空気が入れ替わることになるので、換気量としては十分といえるでしょう。
と、いうわけで
F-15J・1機のエンジンを全力運転すると、東京ビッグサイト東展示棟のうちの1つをおよそ15分で1回換気できる
ということになります。
おまけ・燃料費は如何ほど?
ではこの換気能力を発揮する為の燃料代は如何ほどになるのか。
F-15のミリタリースラスト(アフターバーナー無しの最大推力)における燃料消費量は、おおよそ3~3.5L/秒ほどと言われます。
令和元年度のJetA-1航空燃料の調達価格の平均がおよそ1リットルあたり70円。
という訳で『1秒』あたりおよそ200~250円、1時間だと72万~90万円。
ちなみにほぼ同じ量の換気を送風機で実現する場合はおおよそですが45kWか55kWのモーターを搭載した送風機が2つは必要になります。
併せて100kWで1時間の電力消費量をざっくり100kwhとすると、200V低圧動力の電気料金が15.8円/kwhなので1時間あたり1580円。
こっちのほうが遥かにお得ですね(苦笑
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