ミサイルは撃つ前に「冷やす」?シーカーの冷却。
離れた敵を自動で追尾して、命中させるミサイル・誘導弾。
電波で誘導するもの、熱源を追いかけるもの、画像で認識するものなどがありますが、実はミサイルの種類によっては発射前に「冷やす」という手順が必要になります。
冷却が必要な赤外線誘導ミサイル
ミサイルの中で、この「冷却」という手順が必要なのは赤外線誘導方式と呼ばれるミサイルです。
代表的なものでは、戦闘機に搭載されている短射程のミサイル・AIM-9サイドワインダー。
歩兵携行型地対空ミサイルなどが、これに該当します。
(画像は陸上自衛隊の91式携帯地対空誘導弾)
このタイプは電波に頼らずに「熱を発している物体」を追いかけるミサイルです。
利点としては電波の送信部・受信部などを必要としないため、ミサイル本体の構造をコンパクトに収めることが出来ます。
歩兵携行型のミサイルにこの方式が採用されているのも、この為です。
検知には「温度差」が重要
この赤外線誘導方式のミサイル、その原理上狙う相手が高温であればあるほど、より正確に追尾することが可能ですが、同時に狙いを定めるシーカーそのものの温度にも影響を受けます。
狙う相手の温度が高くてもシーカーそのものが高温になってしまっていると、温度差が小さいので上手く相手を捉えられないのです。
特に戦闘機の場合、ミサイルは翼などに剥き出しで搭載されているため、飛行中に空気の摩擦でかなりの高温となってしまいます。
この影響を排除するためには「射撃直前にミサイルシーカーを冷やす」という手順が必要なのです。
AIM-9のL型およびM型を例に取ると、ミサイル内部に冷却用のアルゴンガスが充填されており、発射体制に入るとシーカーの冷却が始まり、十分に冷えた後に目標を補足、その後発射されて敵機を追尾します。
なお最新型のAIM-9Xでは、従来使われていた冷媒ガスによる冷却から、小型の冷凍機を用いた冷却方法に変更されました。
これにより冷却に伴う制限が大幅に緩和され、より高い攻撃能力を有しています。
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