ブラックホークUH-60は腰に優しくないヘリコプター
映画:ブラックホークダウンなどでもその名が有名な多用途ヘリコプター、UH-60。
自衛隊でも陸上自衛隊の多用途ヘリ、航空自衛隊・海上自衛隊では救難ヘリとして活躍しています。
UH-1と並んで多用途ヘリの代名詞とも言えるUH-60ですが、乗員にとっては「腰痛」という避けて通れない問題があります。
UH-60はとにかく天井が低い
UH-60は双発ターボシャフトエンジンを搭載、全長およそ20メートル、最大で約5トンの積載能力を有するなど、ヘリコプターとしては大き目の部類に入る機体です。
最大で武装した歩兵1個分隊、11名が乗ることも出来ますが、そのキャビンは決して広くはありません。
なかでも特徴的なのが天井の高さ。
1番高いところで54.25インチ=約1.38メートル、低いところでは53.5インチ=約1.36メートルしかありません。
電車の吊革(座席前にある低い方)の高さが、床面から1.6m前後と言われているので、それよりも更に20cm以上低いということになります。
またハイエースなどのワンボックス車両の荷室がおおよそ1300~1400mmの間ですので、UH-60のキャビンの高さとほぼ同じであると言えます。
これだけ天井が低いと、成人男性は膝立の姿勢でも頭は天井ギリギリか、あるいは動いた弾みで頭をぶつけるかという高さです。
(特にヘルメットも着用していれば数cm高さが増す)
その為、機内では必然的に中腰の辛い姿勢を取ることが多くなり、乗員の腰への負担は相当なものとなるようです。
何故こんなに天井が低い
UH-60がこれだけ天井の低い機体となったのは、その設計において
「C-130輸送機で空輸が可能なヘリとすること」
という条件が求められたことが大きな理由です。
ヘリコプターはその特性上、長距離を自らの力で飛ぶことは不向きであり、戦略レベルでの長距離移動に際しては他の移動手段を用いた方が合理的です。
そこで固定翼機にヘリコプターを載せて、長距離を運んでもらうという考えに至ったわけですがC-130輸送機の荷室の高さ制限は2.74メートル。
この高さの制限内でヘリコプターを設計しなくてはならなくなったため、必然的に機体全体が背の低い構造となり、それに伴いキャビンの天井も低くせざるを得なかったわけです。
改良された機体も
海上自衛隊の装備する哨戒ヘリコプター、SH-60では新型のSH-60Kにおいて、SH-60Jと比較してキャビンの高さを15cm拡大するという改良が施されました。
たかが15cm、されど15cm。
元があまりに低すぎた為に、その効果はかなり大きいそうで、乗員からは好評という話を聞きます。
しかしこれもUH-60とは違い輸送機への搭載を想定していないからこその改良なので「C-130輸送機」というベストセラー輸送機が健在の限り、UH-60の天井は高く出来ないのかもしれません。
※参考資料
- 世界の名機シリーズUH-60ブラックホーク(イカロス出版)
- 世界の名機シリーズC-130ハーキュリーズ(イカロス出版)
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