見た目に似合わずじゃじゃ馬?過激なエンジンを積んだ軍用機

見た目に似合わずじゃじゃ馬?過激なエンジンを積んだ軍用機

飛行機の性能を決める1つの要素として推力重量比という値があります。

搭載しているエンジンの推力と、機体そのものの重量がどれだけの比率かという値です。

当然、軽い機体に高出力のエンジンを積んでいれば推力重量比は良好な値となり、機体の機動性向上に大きく貢献します。

推力重量比の良好な飛行機の代表格は高機動を行う戦闘機ですが、実は見た目の割りに高出力なエンジンを積んでいる意外な機体もあるのです。

今回はそんな過激なエンジンを積んだ暴れ馬とも言える機体を紹介していきます。


コミックマーケット献血応援イベント

C-130と同じエンジン
早期警戒機E-2C

アメリカ海軍では空母艦載機、航空自衛隊では航空基地から早期警戒機として運用している、背中に積んだレーダードームが特徴的なE-2C。

乗員は操縦士と搭載電子機器の操作を担当するオペレーター合わせて5名。
最大離陸重量は24トンほどの機体ですが、この機体に積んでいるエンジンはアリソンT-56というターボプロップ。
これを2発積んでいることで約1万馬力という高い出力を得ています。

このT-56というエンジン、実はC-130H輸送機に搭載されているものと同型なのです。

輸送機としては中型の部類に入るC-130Hですが、その最大離陸重量は70トン。
これを飛ばすために4500馬力のエンジンを4発搭載しています。

つまりC-130Hではエンジン1基でおよそ17トンを支えている計算ですが、E-2Cではエンジン1基が12トン
しかもE-2Cに搭載のエンジンの方が500馬力以上も高い出力を出す事が出来ます。

小柄な見た目に似合わず、とんでもなく高出力なエンジンを積んでいるのです。

E-2Cにこれだけのエンジンが搭載されている理由は「艦載機」としての運用が求められるため。
空母では限られた滑走距離しか確保できず、また発艦後も速やかに上昇する必要があるため、どうしても機体の重量に対して高い出力が求められるのです。

また外見上の大きな特徴であるお皿のレーダー及び早期警戒機としての各種電子装備を稼動させる為に高出力の発電機がどうしても必要で、それを安定稼動させるためという理由もあります。

飛行艇US-2

自衛隊機の中でも一際異彩を放つ飛行艇のUS-2。

実はこの機体も高出力エンジンを積んだ機体の1つです。

US-2のエンジンはロールス・ロイスAE2100×4発。

このエンジン構成はC-130輸送機の最新型、C-130Jスーパーハーキュリーズと同じものです。

しかしC-130Jの最大離陸重量が約70トンであるのに対し、US-2のそれは約48トン。

エンジンは同じですが、最大離陸重量でおよそ20トンの差があります。

US-2がこれだけのエンジンを求められる理由としては

  • 「波」「水面」という大きな抵抗に抗って加速するパワーが必要
  • 短距離離着陸(水)の為に高い加速力が求められる

という飛行艇ならではの理由ではないかと思われます。

高出力故の悩み

では、軽い機体に高出力なエンジンを積んでいるのが必ずしも良いのかというと、これはこれで悩みがあるのが飛行機の難しいところです。

戦闘機や曲技機が分りやすい例ですが、高い出力のエンジンを積んでいるということは機体の扱いがそれだけシビアでデリケートになるということ。

先に挙げた2機種も実際、パイロットの技量が試される「暴れ馬」だそうです。

また当然ですが、高性能なエンジンを運用するにはそれだけのランニングコストが必要になります。

ハイパワーな機体は操縦も整備も手間の掛かる「じゃじゃ馬」なのです。

※参考資料

  • 世界航空機年鑑(せきれい社)
  • 戦闘機年鑑(イカロス出版)
  • 航空力学「超」入門(著:中村寛治)