自らミサイルを演じる訓練支援機U-36A

自らミサイルを演じる訓練支援機U-36A

護衛艦・艦艇にとって脅威となりえるミサイルによる攻撃。

それに対抗するため、対空ミサイルや速射砲、CIWSなどの対空火器の他、電子防護やチャフなどの欺瞞手段を搭載していますが、それらを使いこなすために訓練は欠かせません。

今回は、そんな対空戦闘の訓練を支援する変わった機体、U-36Aの紹介です。


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U-36A

U-36Aは岩国基地・第31航空群に所属する機体です。

第31航空群は海上自衛隊の中でも少し変わった機体が配備されている航空群で、第71航空隊には救難飛行艇のUS-2。
第81航空隊には電子戦用のP-3であるEP-3などが配備されています。

U-36Aは第91航空隊に所属しており、電子戦訓練支援用に改造されたUP-3Dと共に艦艇の対空戦闘訓練支援の任務を担っています。

機体はビジネスジェットとして有名なアメリカのゲイツリアジェット社のリアジェット36(リアジェット35の改修モデル)をベースとしており、新明和工業が自衛隊向けの改修を施した上で使用されています。

なおビジネスジェットでありながら、どこか軍用機を彷彿とさせるフォルムをしていますが、これは原型機のリアジェットがスイスで開発されていた戦闘機FFA P-16の主翼設計を用いているという点から来ているのではないかと思います。

自らミサイルになりきる

一般的に訓練支援機は、電波などを発し電子戦の訓練を行ったり、機体から標的機を曳航するのが一般的でU-36Aにも下画像のように標的曳航の機能が備わっています。

この機体の変わったところは「自らミサイルになりきる」という点です。

艦艇に対してU-36Aは自らの機体をミサイルに見立てて接近する訓練を実施します。

この際、当然ただ飛行するわけでなく、ミサイルの弾頭シーカーと同等の機能を持った翼端のシュミレーターを用いて「ミサイルの目」から見た視点を再現します。

また反対側の翼端には訓練の映像を記録するためのカメラが搭載されているそうです。

後継機はどうなる?

そんなU-36Aですが、実は結構な年季の入った機体となっています。

最初の1機が導入されたのは1987年、先の画像に出てきた01号機がそれに当たりますが、既に導入から30年以上が経過していることになります。
また他の機体も続々と30年の機齢を迎えていくでしょう。

また艦艇に対して自らミサイルを模して飛行するという任務の特性上、一般的なビジネスジェットのそれと比較しても機体への負荷は大きいのではないかと思います。

しかしU-36Aの後継機に関しては一向に噂を聞きません。

ビジネス仕様機のためキャビンも低く扱いにくいリアジェットに海上自衛隊は興味が無かったが『お付き合い』でアメリカ製の機体を買う羽目になったという噂もあったり、そもそも将来的にはUAVで代行できるので、U-36Aの後継機は買わずに繋ぎの期間はP-3Cの余剰機を改修すれば?という話も見たことがあります。

変わった任務を担うこの機体の後継機はどうなるのか?今後、気になるところです。

※参考資料

  • 海上自衛隊ホームページ
  • 航空情報 世界航空機年鑑各号(せきれい社)