戦闘旗・自衛艦旗・国旗。海上自衛隊の「旗」の扱い
隣国の観艦式に際して「旗」が何かと話題となっています。
軍隊、特に海軍においては「旗」は古来より非常に重要なものとされており、その扱いについては様々なルールがあります。
今回は海上自衛隊の規則から、どのように旗が扱われているのか解説していきます。
自衛艦旗の掲揚
海上自衛隊の艦船であることを示す自衛艦旗。
基本的に艦尾の旗竿に掲揚されます。
航行中は必ず掲げることとなっていますが、停泊中については幾つか決まり事があり
- 国内に停泊中は朝8時から日没まで
- 自衛隊の所属以外で旗を掲揚する船が近隣を通航する場合、相手の船から見えなくなるまで
- 外国港に停泊中は必要に応じて、いつでも掲揚する
となっています。
横須賀や呉などの港に行くと、夕暮れの時間に艦尾側で旗を降ろすシーンを見ることが出来ます。
特殊な船の場合
水上艦の場合、旗は常に掲揚することが出来ますが、旗を掲げる上で支障が出る艦種もあり、これらについては個別に対応が定められています。
まず1つが潜水艦。
浮上中は水上艦と同様に自衛艦旗を艦尾側に掲げますが、潜航準備を始める時に旗を仕舞います。
もう1つがエアクッション艇・LCAC。
エアクッション艇は現在、搭載艇ではなくて個別の「艦艇」として自衛艦籍にあるので、護衛艦と同様に自衛艦旗を掲揚することが出来ます。
しかし強力な推進器を備えているためか、基本的に旗を掲揚する事はありません。
代わりに船体に自衛艦旗と同様の塗装を施すことで、旗を掲げているのと同様の扱いを受けるものとされます。
また、いわゆる「内火艇」など艦に搭載されている小型船の場合。
これがなかなかややこしく
- 司令旗など別の旗を掲げている時
- 満艦飾、艦飾を実施している艦船の近くにいる時
- 港外を航行している時
- 外国船との交通時
など特定のケースを満たした場合に自衛艦旗を掲げるものとしています。
国旗の掲揚
日本国の国旗である日章旗ですが、海上自衛隊の護衛艦など艦船においては航海時には国旗を掲げず停泊中のみ船首側に掲げる規則となっています。
(ただし特別の必要があると責任者が判断した場合、航行中でも国旗を掲揚する)
掲げる時間は自衛艦旗を掲揚する時間と同様です。
また自衛艦旗を持たない支援船においては、港外を航行する場合などに艦尾に国旗を掲揚することとなっています。
(常時、人が乗り込む支援船については護衛艦等と同様に国旗を扱う)
戦闘旗
交戦中であることを示す『戦闘旗』ですが、海上自衛隊において『戦闘旗』という名称は存在しておらず、次のような規則で定められています。
法第76条第1項の規定により出動を命ぜられた自衛艦が、武力を行使する場合には、自衛艦旗をメインマストに掲揚するものを例とする。
2.前項の規定は、自衛艦が戦闘訓練を行なう場合に準用する。
(海上自衛隊旗章規則)
自衛隊法第76条第1項とは『防衛出動』のことです。
即ち訓練以外で海上自衛隊の艦がメインマストに旭日を掲げる時、それは即ち防衛出動が総理大臣より下命され、その武力を行使する時のみとなります。
とある護衛艦が退役を迎えた時、その艦長さんが「ただの一度も砲火を交えることなく引退出来るこの艦は幸せである」という旨の挨拶を述べられましたが、願わくば訓練以外でメインマストに掲げられた自衛艦旗を見る日が訪れないのを願いたいものです。
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