灼熱アスファルト。大型ヘリコプター・チヌークで打ち水したら、どれくらい冷える?【空想ミリタリー科学】
連日、猛暑が続く日本列島。
筆者の住んでいる首都圏でも連日35℃超、場所によっては40℃を超えていて、愛犬共々暑さにやられないように必死です。
さて、暑さ対策の一環としてよく聞く「打ち水」。
しかし、ちょびちょびと撒いているだけでは、まさに「焼け石に水」
なら、いっそ大量に水を撒いたらどうなるか。
自衛隊の大型輸送ヘリ、CH-47チヌークの空中消火機材で「打ち水」をしたらどうなるのか、馬鹿真面目に検証してみました。
チヌークが運べる水量
チヌークの空中消火機材は正式名称「野火消火機材」と言われ、バンビバケットのⅠ型とビッグディパーバケットのⅡ型、2種類があります。
どちらも最大水量は「7500L」です。
実際はヘリの運用に余裕を持たせるため、多少水を減らして運用すると聞きますが、今回は最大水量の7500Lで計算していきます。
冷却能力
打ち水による冷却は、一般に蒸発する事で熱を奪う「気化熱」の作用によるもの。常温20℃前後での水の気化熱・蒸発潜熱は約2450KJ/kgですので、この値を使うとします。
水1Lを1kgとして7500L=7500kgの水が蒸発する際に奪う熱量は
18.375GJ
と、いわれてもピンと来ないので6畳用エアコンに換算してみましょう。
6畳用のエアコンは一般に冷房能力2.2kW。
1時間に7920kJの冷却を行うことが出来る計算です。
これで先ほどの18.375GJを割ると
2320台
になります。
と、いうわけでチヌークが1回で撒ける水の蒸発潜熱は、家庭用の6畳エアコン2320台が1時間で冷やすことの出来る能力に匹敵する計算です。
だけど焼け石に水?
一見すると、凄まじい熱量を奪うように見えますが、では実際に地面を冷やす効果はどれほどのものなのか?
一般的な舗装路面と仮定して以下のデータを引用します。
密度:2.38g/立法センチメートル
比熱:0.85
熱容量:2.02J・立法センチメートル^-1・K^-1
(引用元:http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/nenpo/17nenpo/1720.pdf)
これより、1立方センチメートルの舗装路面を1度温度変化させるのには2.02Jの熱量が必要です。
舗装の厚み5cmとしたとき、1平方キロメートルの舗装路面は5×10^10立法センチメートル。
すなわち、1平方キロメートルの舗装路面全体から1℃の熱を奪うには、およそ
101GJ
の冷却作用が必要になります。
先ほど書いたとおり、チヌークが運べる水の量で奪える熱量は約18GJ。
101GJ>>>>>>18GJ
全然足りません。
仮に1平方キロメートルを1℃冷やそうと思ったら、チヌークが6機編隊で水を撒かないといけません。
コンクリジャングルにはチヌークのパワーをもってしても「焼け石に水」なのです。
と、いうわけで今回のまとめとしまして
- チヌークが撒ける水で理論上は6畳用エアコン2320台×1時間の熱を奪える
- しかし、それでも1平方キロの舗装路面を約0.2℃下げる効果しかない
- 1平方キロを1℃冷やすにはチヌーク5機~6機編隊で水を撒く必要がある
そもそも、これだけ水を撒いたら湿気が凄まじくなりそうですね(苦笑
※参考資料
- 第1ヘリコプター団HP
- 東京都建設局 東京都土木技術支援人材育成センターHP
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