災害派遣の航空機出動。何分以内に上がれる?
先日、大阪を襲った大きな地震。
亡くなられた方のご冥福をお祈りしますと共に、被害に遭われました方が1日でも早く元の生活を取り戻せますよう願っております。
さて、今回の地震では7時58分の地震発生から約15分で舞鶴から哨戒ヘリコプター、小松よりF-15戦闘機が発進。
更に中部方面航空隊や小松救難隊なども次々と上がり情報収集を実施しました。
今回は全国の自衛隊航空部隊が平時において、どのような待機体勢を取っているか、まとめてみたいと思います。
戦闘機部隊は5分待機
自衛隊の所有する航空機の中で最も即応性の高い状態におかれているのが、F-4EJ改・F-2・F-15Jなどの要撃機部隊で、いわゆる「スクランブル発進」に備えて待機しています。
飛行前の事前準備(プリフライトチェック)を全て終えた状態の戦闘機2機とパイロットを常にスタンバイさせることで、北は千歳基地、南は那覇基地まで全国各地の航空基地において「5分待機」と言われる状態を24時間365日維持しています。
防衛省では震度5強以上の地震が発生した場合、待機している航空機を任務転用して情報収集活動を実施するとしており、震災発生時に戦闘機が真っ先に出動するのは、これを根拠としたものです。
戦闘機には偵察用の機材は搭載されていませんが、とにかく上空から「何が起きているか」を見てくるというのが任務です。
夜間であれば大火災は起きていないか、停電は起きていないか、といった情報だけでも初動対応の方針を決める上では有意義となります。
なお
百里基地の偵察航空隊・第501飛行隊のRF-4E及びRF-4EJ(以下、RF-4と記述)が災害時に真っ先に被災地の確認に飛び立つ
とよく言われますが、偵察航空隊の航空機は緊急発進が可能な状態に置かれていませんので離陸するには相応の時間が必要です。
東日本大震災の際にも3月11日、17:00の防衛省発表でRF-4の行動は確認されておらず、日付が変わって3月12日、01:00の発表で
百里(RF-4×3飛行中(18:03)
と出てくるのが最初です。17:00の発表には16時10分までの発進が記録されているので、少なくとも震災後1時間以上は飛んでいないと推測されます。
15時05分には百里基地より第305飛行隊のF-15が緊急発進していますので滑走路や管制施設が壊れていたというわけでもありません。
但し、偵察機としての能力が災害派遣において発揮されることには違いはないでしょう。
(RF-4について等 2019/6/19 追記)
救難隊は15分待機
戦闘機に次いで素早く発進できる状態を維持しているのが航空救難部隊です。
航空自衛隊では航空救難団・救難隊、海上自衛隊では飛行艇やUH-60Jを運用する救難部隊がこれに当たります。
航空自衛隊では全国各地の救難隊を常時「第1待機」と呼ばれる状態に置いており、出動命令が下ればU-125AとUH-60Jのペアが15分以内に離陸することが可能です。
また次いで第2待機の機体は2時間以内に出動可能な状態となっています。
海上自衛隊の救難部隊は、航空自衛隊と同様に即応可能な第1待機部隊と第2待機部隊がありますが、第1待機は回転翼機と固定翼機で待機時間が異なり
回転翼・・・15分待機
固定翼・・・30分待機
となっています。
第2待機については、回転・固定共に2時間待機です。
なお空・海共に救難部隊は本来、航空事故の発生時に備えている部隊(航空救難の専任部隊と言います)ですが、自衛隊の災害派遣に関する訓令において航空救難以外の事態にも使用するものとしており、航空事故以外の災害派遣・人命救助も必要に応じて対応します。
陸自ヘリも待機している
スクランブル機や救難隊だけではなく、陸上自衛隊の回転翼部隊も年中無休の体制で出動に備えています。
自衛隊の災害派遣に関する訓令において、方面総監は自らの警備区域内において最低でも1機の回転翼機を常時発進可能な状態に置くことが求められており、過去の災害派遣などの事例を見る限りは各方面航空隊の多用途ヘリコプターがこの任務を与えられているようです(主にUH-1J)
初動対処部隊・ファストフォースが災害派遣要請を受けてから1時間以内に行動を開始できるとされていることから、最低でも1時間で飛行可能な状態に置かれていると思われます。
なお、これらはあくまでも「待機している部隊」であり、実際の災害発生時には飛行可能な機体があるなら、そちらを使用することもあるようです。
※参考資料
- 自衛隊の災害派遣に関する訓令
- 自衛隊の災害派遣に関する達
- 航空救難に関する訓令
- 防衛省HP 初動対処部隊の名称の付与について
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