『武装難民』というグレーゾーンの難しさ
先日、報道で騒ぎになった『武装難民』というワード。
発言の真意や射殺云々の話はさておき、筆者も朝鮮有事に備えて積極的な議論が必要な話だと思います。
なぜ武装難民というのが厄介な話になるのか、法的な観点から解説していきます。
武装難民に自衛権は発動出来るか
ここでいう武装難民とは
- 何らかの手段で自衛武器を入手した渡洋難民
- 海を渡る難民に紛れ込んだ武装工作員、ゲリラ兵など
と考えることとします。
これらに対し、自衛権に基づく武力行使を以って対応可能かと考えた際、筆者の考えはNOです。
我が国の自衛権発動においては、敵国からの「武力攻撃」に対する自衛のための武力行使というのが基本となっています。
武装難民が国家またはそれに準じる組織からの命令・指揮に基づき動いているという確証があれば自衛権に基づく武力行使も可能であるかと思いますが、自衛の為の武器を持っている難民は当然各個の意思で動いているだけですし、武装工作員やゲリラ兵にしても国家の関与を裏付けることは困難です。
と、なると武装難民に対しては、国家として「警察権」の範疇により対応するのが基本となるかと思います。
自衛隊は警察権を行使できるか
自衛隊が対応する=防衛出動と考えられがちですが、自衛隊が警察権に基づき行動することは現行法においても十分に可能です。
例えば海上警備行動は、海上保安庁の対処能力を超えた場合に「海上保安庁=海の警察」の任務を代行する形となりますし、テロ・ゲリラ事案などでの治安出動も定義されています。
ちなみに、あまり知られていませんが災害派遣された自衛官にも
「民衆へ避難やその場に留まることを命じることが出来る」
「被害拡大を防ぐために、他人の建物に立ち入ることが出来る」
(ただしどちらも警察官がその場にいない時に限り適用される)
という警察官職務執行法に基づく権限が付与されているのです。
なので警察権の行使の為に、自衛隊を動かすというのは何ら不思議ではありません。
武装難民事案で自衛隊を動かす場合、海上警備行動及び治安出動により、自衛隊の部隊を日本海及び沿岸部に展開するのが、現行法においての解釈になるかと思います。
ただ何にせよ前例の無い事態で、法解釈や運用もグレーゾーンな部分が多いのが現状です。
いざ、その時に関係各局の連携も含めて事前に協議を重ねておくのは、国家の安全保障において必要なことだと筆者は思います。
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