空自が訓練飛行を行わない1日。航空自衛隊・安全の日
航空自衛隊は日曜日・祝日、年末年始、お盆など、いわゆる官公庁の休みには訓練飛行を行わないのが基本となっていますが、それ以外にも全国の航空自衛隊基地で、アラート任務や救難・災害派遣などを除いた、一切の飛行を行わない日が1日だけ決められています。
それが7月1日、航空自衛隊・安全の日です。
(7/1が休日になる場合、他の日に振り返られる。2017年は7月3日)
この日は、任務飛行以外は原則として行わず、各基地で慰霊祭や安全行事などが行われることになっています。
事故の続いた航空自衛隊・苦難の歴史
この安全の日が設けられたのには、多くの犠牲が重なった経緯があります。
平成11年8月、第301飛行隊のF-4EJ改2が領空侵犯措置のために離陸した後、1機が突如消息不明に。乗員2名が帰らぬ人となりました。
残念ながら自衛隊機の事故そのものは、度々発生しているもので、1994年の冬にも航空自衛隊及び海上自衛隊の救難機が事故により死者を出しています。
しかし、このF-4EJ改の事故発生後、
- 平成11年11月 入間基地T-33墜落事故 2名殉職
入間基地を離陸したT-33練習機が機体トラブルにより河川敷に墜落。
パイロットが脱出安全高度を超えても操縦を続けたことで住宅地への墜落は避けられたが、落下中に高圧送電線を切断。首都圏の大停電に繋がった。 - 平成12年3月 松島基地 T-2女川墜落事故 1名殉職
松島第21飛行隊所属のT-2練習機が山林へ墜落。
飛行訓練生1名が帰らぬ人となった。 - 平成12年6月 美保基地C-1 隠岐諸島沖墜落事故 5名殉職
美保基地第3輸送航空隊のC-1が定期整備終了後の試験飛行に出発後、隠岐諸島沖合にて消息不明に。後に機体の残骸と機長・副操縦士・機上整備員・整備員・空中輸送員、全5名の遺体を収容。 - 平成12年7月 松島基地ブルーインパルス墜落事故 3名殉職
第11飛行隊ブルーインパルスが、訓練飛行を終えて帰投中に、本来の飛行コースを逸脱、地表面に急接近して5番機と6番機が墜落。2機に乗っていた操縦士3名が殉職。
僅か1年の間に航空自衛隊だけで事故5件、13名の殉職者を出すという事態に陥りました。
立て続けに発生した事故を受けて、航空自衛隊では7月1日を「安全の日」として制定。
この日だけは訓練飛行を行わずに、航空事故による殉職者の慰霊、及び安全教育を重点的に行い、事故再発防止への気持ちを新たにする日として現在に至るのです。
どれだけ技術が発達しても、空を飛ぶというのは非常に危険を伴うことだというのは変わりません。特に自衛隊機は時に危険な任務に従事することも求められます。
そして安全に「絶対」はあり得ないのが現実です。
残念ながらこの数年でも自衛隊機の事故は発生しています。
しかし過去の犠牲を顧みず、歩を止めてしまえば、それまでです。
年に1度、空が静かになる日。筆者も改めて「空の安全」を、考えてみたいと思います。
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