【時事ネタ】予防着陸は危険と言うのは、ここがおかしい
お詫び
本記事のタイトル通り、筆者は予防着陸への過度の批判に対して否定的な意見を持っており、現在もその考えは変わっておりません・・・が。
2017年年末に発生した窓枠の落下事案及び、2018年1月に発生いたしました連日の飛行場外への予防着陸事案を見まして
海兵隊という組織への考えが甘かった
と言わざるを得なくなり、海兵隊は流石に飛行を自粛すべきとの意見を持つようになりました。
予防着陸は言わば「体調不良で会社を休む」ことに似ていると思います。
何事もないかもしれないが無理に出勤したら重症化するかもしれない、社内感染してしまうかもしれない、だから体調が悪いときは会社を休むべきであると。
しかし、それも「普段から体調管理・健康管理をしっかり行っており、それでも生身の人間である以上、体調を崩す事もある」という前提に基づくものです。
あまりに体調不良での欠勤が多ければ、普段の健康管理を疑われたり、あるいはもっと重大な病気を抱えているのではないかと疑われるのは仕方ないでしょう。
予防着陸は「そのまま飛べるかもしれないが、更に重大な故障を招いたり、墜落で地上を巻き込みかねないから、降ろせるところに降ろす」というものです。
しかし、これも「普段から整備・運航管理を行っており、それでも飛行機はトラブルが起きてしまうもの」という大前提が必要です。
民間航空機のリターン事案の件数や軍用機という特性などを見て、この記事を書いた時点では筆者は「海兵隊が突出して多いわけではない」と考えておりました。
しかし、ここまで多いと偶発的なトラブルとは言えず、何かしら組織的欠陥を抱えている→飛行を自粛すべきとの意見にならざるを得ません。
物事の本質を見れなかったことを、猛省致します。
以下、当初執筆内容。
先日、米海兵隊普天間基地所属のMV-22オスプレイが伊江島の飛行場に予防着陸した事を受けて、とある新聞社の記事に「相次ぐ緊急着陸」は危険である、米軍の安全管理体制は疑問であるといった内容が出されました。
確かに、本来の予定とは違う場所に降りたというのは確かです。
しかし予防着陸=危険などというのは「安全」という観点から見て、あまりにも狂気の沙汰と言わざるを得ません。
今回は、この辺を解説していきたいと思います。
そもそも「予防着陸」とは
皆さんは車の運転中に、警告ランプが点灯したり、何か車体の挙動がおかしいと感じたら、どうするでしょうか?
そのまま走り続けたら危ないと感じて、車を安全な場所に停めて、何か異常が無いかチェックする方がほとんどだと思います。
自動車または鉄道であれば、地に足を付けていますので、周辺の安全さえ確保出来るのであれば、いつでも何処でも停止することが出来ます。
しかし空を飛んでいる航空機は、そうはいきません。
何としてでも地面に降ろさないと、安全に停止させることは出来ないのです。
更に着陸するには十分な広さも必要です。
その為、航空機の場合、異常を検知したら、最寄の着陸可能な場所へ、速やかに向かうことになります。
この異常検知時に最寄の場所へ降ろす事を予防着陸と言います。
予防着陸は危険なのか
これは筆者の機械屋としての経験上ですが、本当に危ない時と言うのは、何の前触れも無くいきなりクリティカルな不具合が発生します。
一般に安全装置の付いている機械の場合
①運転に支障は無いけど、一応確認して(エラー)
②このまま運転することは推奨できない(警告)
③運転継続不可・安全装置作動(強制停止)
こんな感じで段階的にメッセージが表示されます。
で①のエラー表示なんていうのは、結構頻繁に出ます。
自分の扱ってた機械は輸送用途でもなければ、ましてや飛行機でもありませんので、エラーが表示されたらチェックして、問題なければ様子見、怪しければ調整で済みます。
(そこで見落としなどがあると、後で手痛い目に合いますが・・・)
ただ本当に整備を怠った機械や寿命の来てる機械は①と②をすっ飛ばして、いきなり③が来ます。
モーターや回転軸が焼きついたなんていう泣くに泣けないレベルのトラブルです。
つまり、軽微なエラーがちゃんと検出されているということは、それは機械として、むしろ当たり前の状態なのです。
もし飛行機が、いきなり③のエラーに達したら、よくて不時着、墜落の可能性も十分にありえるでしょう。
ただ先ほども述べた通り、飛行機はエラーが発生したからといって、その場でチェックすることは出来ませんし、それが放置するとまずいエラーであれば飛行中に更に深刻な事態を招きかねません。と、なれば予防着陸するしかないのです。
ましてや飛行中にクリティカルな不具合など絶対にあってはいけないことですから、早め早めの対応が必要でしょう。
なので予防着陸は、機械がまともに動いていて、またそれに対する対処が正しく行われているということです。
予防着陸を危険だと言うのであれば
筆者は安全について「許容できないリスクが排除、またはコントロール下にある状態」というのが持論です。
この許容できないリスクというのは、様々な考え方があると思います。
当然、軍用機と民間機でも違うでしょう。
なので「予防着陸すること」を一切許容できないリスクとして、それを排除出来ないのであれば危険だから飛ぶなという意見があるとすれば、それはそれでありだと思います。
ただし
予防着陸は軍用機に限った話ではありません。民間機でも月に数件の頻度で発生しているほど、珍しい話では無いのです。
例えば全日空のホームページ、安全・運航情報より本年度3月分のトラブル情報を確認すると国内線と国際線で計4件の引き返し事例が発生しています。
引用元:https://www.ana.co.jp/flt_data/1703/cause.html
これは、いずれも飛行中に警告灯点灯、またはパイロットが異常を検知したため、出発空港に引き返したものです。
もし、米軍機の予防着陸は危険だ、許されない、飛行するべきでないという意見を述べる人は、当然予防着陸を行った全ての航空会社に対して「お前のところは危険だから飛ぶな」と言うべきでしょう。
もっとも、沖縄の旅客・貨物輸送において飛行機は不可欠なものとなっていますが。
いや、民間機と米軍機は別の問題だ、一緒にするなと言われるかもしれません。
それはそれで、結構だと思います。
ただし、それは「米軍機に対しては【許容出来ないリスク】として、民間機とは異なる基準を求める」、そういった特殊なバイアス・偏向の掛かった意見の持ち主だということを明らかにして頂いた上での話ですね。
マスコミの世論操作の意図が見えます。
新幹線が異常が発生していたのに停車させて点検しなかった時は、専門家の意見を伝えてJRの安全管理体制を非難し、米軍ヘリが予防着陸した時は、航空機の専門家ではない住民の意見を重点的に伝えて米軍基地の問題として伝えていると思います。