沖縄の離島の命は自衛隊が支えている(日本一忙しい急患輸送)
沖縄県の自衛隊というと、どうしても昨今注目を集めるのは、那覇基地からの領空侵犯措置・スクランブル発進ですが、以前より沖縄県に駐留する自衛隊は、沖縄の離島にとって、無くてはならない存在となっています。
- 平成29年3月:10回
- 平成29年2月:9回
- 平成29年1月:14回
何の数字だと思うでしょうか?
これは沖縄県知事より、自衛隊へ航空急患輸送の要請が出された回数です。
平成28年度の1年間で沖縄県では155回の急患輸送要請が自衛隊に出されており、2日に1回に近いペースとなっています。
陸上自衛隊・第15旅団隷下・第15ヘリコプター隊(旧・第101飛行隊、第15飛行隊)はCH-47J/JA、UH-60JA、LR-2を運用する飛行隊で、本来の任務は他の陸自飛行隊と同様、旅団の航空輸送を担うことですが、この部隊は自衛隊の部隊でも最も国民の命を救っている部隊の1つでもあるのです。
沖縄県にはEC135ドクターヘリコプターが配備されており自衛隊に頼らない航空救急も行っていますが、このサイズの機体で運用出来る行動半径は精々100km前後。
那覇を中心として100kmで、ちょうど沖縄本島をカバーすることは出来ますが問題は離島です。
本島~宮古島まで約300km、石垣島では420kmの距離があり、これを往復運用しようと思うと対応出来るヘリコプターは航続距離1000km近くを要求されます。
EC225シュペルピューマでも航続距離900km程度でギリギリになると思われます。
日本にあるヘリコプターで、この長距離フライトに対応可能なのはチヌークかブラックホークくらいしか無く必然的にそれらの機体を常時運用可能な自衛隊が、その任務を任されることになります。
離島があるのだから自前で・・・と言う声もあるかもしれませんが、大型ヘリコプターは維持費も乗員の確保も、とにかく莫大な予算を必要とします。
シュペルピューマを地方自治体で購入できているのも、東京都・千葉県・大阪府など、予算に余裕のある都道府県だけで、他は小型ヘリが主流です。
空港のある島へは状況に応じてLR-2が向かう事もあります。
また沖縄県だけでなく、鹿児島県に属する奄美諸島などからも出動要請が掛かることがあり、その場合も沖縄本島から第15ヘリコプター隊が向かう事が多いです。
平成28年10月には第101飛行隊時代も含めて、急患輸送の対応回数が9000回を超えるという、まさに離島の生命線として国民の命を救ってきた部隊なのです。
なお画像については現地の機体ではなく、筆者の地元の機体になっていることをご容赦ください。
何故、このタイミングでこの記事を書いたかというと宮古島で自衛隊のDVD撤去云々と言う話を見てのことです。
あえてtwitterやら魚拓やらは載せませんが、ここ数日騒ぎになっているので、目にした方も多いでしょう。
政治的なネタはよからぬ騒ぎの元になるので、あまり関わらないのですが、これだけは書いておきたく、今回記事にしました。
自衛隊は本来、国を守るための組織です。
そして、その任務遂行能力を「急患輸送」という形で、国民の命を救うために使ってくれています。
常に要請に備えて厳しい環境下でも駆けつけるのは、簡単なことではありません。
特にヘリコプターの場合は有視界飛行になるので、視界の悪い環境やナイトフライトは「障害物を隊員総出で窓に張り付いて探す」なんて話もあるくらいです。
(電線1本・樹木1本でもメインブレードに接触すればヘリには致命傷です)
危険な任務故に、過去には固定翼機1機・回転翼機1機が急患輸送任務で墜落、隊員7名殉職、同乗の医師1名死亡という悲劇も起きています。
まさに命懸けで急患輸送任務に望んでいるのです。
筆者は沖縄の基地問題賛否については、あまり語らないようにしています。
安全保障の観点から沖縄がチョークポイントというのは軍事や地政学の一環として理解はしているものの、先日、現地で実際に嘉手納などを見てきて、やはり地元ならではの意見と言うのはあると思うからです。
捏造されたデータを根拠とした主張や、何故か県外からやってきた「住民」、法の秩序を守らない反対運動は、賛否以前の問題ですがね。
しかし沖縄の離島で命を救うために尽力している自衛隊を非難の対象にする。
私には、その神経は理解出来ないですし、何より今も急患輸送の出動に備えていらっしゃる隊員さん達や、殉職された方々に失礼だと思わざるを得ないのです。
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