戦闘機のアレスティング・フック
先日H29/4/4、小松基地に所属するF-15が、ブレーキの不良を知らせる警告灯が点灯したため、緊急制動用のフックを用いて着陸したとのニュースがありました。
ニュース記事のコメントを見ると「フックなんてあったの?」という感想が幾つか見受けられましたが、実は空軍機でもフックはちゃんと装備されているのです。
手前の地面に転がっているのが制動用ワイヤー。
奥に張ってあるのはオーバーラン防止用のバリヤーネット
戦闘機に付いているフックの正式名称はアレスティング・フック。
“arrest”で「引き止める、拘束する」といった意味合いです。
最も有名なのは、航空母艦の着艦時に用いるものだと思います。
こちらは米海軍スーパーホーネットのアレスティング・フック。
これで着艦の際には機体を強引に引っ張って止めるわけですから、流石に太さが尋常じゃありません。
F-15のフック
F-15J/DJのフックは、航空祭の展示飛行でギアダウン状態での飛行を行う際に、ギアと一緒に下して飛んでいることが多いので、意外と見る機会は多いと思います。
赤丸のところに付いているのが、イーグルのアレスティング・フックです。
スーパーホーネットのものに比べかなり細いのですが、空母という僅か300mほどの限られたスペースでフックを使わないと止まれない艦載機とは違い、空軍機のフックは あくまで非常用という位置づけになります。
1000~2000mあるような滑走路で止まれれば十分なので、艦載機の着陸ほど強い力は掛かりません。
また艦載機の場合、整備・補給が済めば再度発進することも想定されますが、空軍機がフックを使うような時は機体に何らかのトラブルが起きている時です。なので無事に着陸出来ても機体は点検・整備送りになります。
異常発生時に1回だけ着陸に使えれば、仮にフックが損傷していても交換すれば済むという考え方なのです。故に、無駄な重量が増えないようフックも必要最低限の作りになっています。
F-2のフック
F-2のフックは機体と同じ色に塗られているので分かりにくいのですが、センタードロップタンクの少し後ろ、この位置にあります。
F-2もギアダウン状態での展示飛行は行うのですが、自分が知る限りフックを下している姿を一度も見かけたことがありませんし、色んな方の写真や動画を拝見しても、F-2のフックが出てる姿はほとんどありません。
何故だろう・・・?と思って調べてみたら、F-2の設計において基となった、F-16のマニュアルに答えがありました。
F-16も全く同じ位置にアレスティング・フックが付いています
The hook must be raised manually to reset it to the stowed position.
→収納位置にリセットするには、手動で持ち上げること
下すのは自動だったけど、戻すのは「手動」だったようです。
これじゃあ本当に使うとき以外、下すわけにはいきませんよね。
F-4のフック
F-4系統の機体は、ここにフックがあります。
F-4は元々、海軍の艦載機として開発されているため、アレスティング・フックは艦載機基準の非常に頑丈なものが付いています。
空軍型を採用するにあたって、足回りを空軍仕様に改良するという案もあったそうですが、機体の再設計に要する手間に対して効果が乏しいとの理由から、そのまま使用することになったとか。
非常時にフックを上手くワイヤーに掛けられないと意味が無いということで、自衛隊でもフックを用いた着陸訓練が定期的に行われており、稀に基地でその姿を見ることが出来るそうです。
(筆者は一度も見たことがありません・・・)
フックが地面に擦れて、激しい火花を散らす姿は、一度見てみたいものです。
ただ「本当に」使う事態は、起きないにこしたことはありませんね。
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