C-2輸送機就役で振り返る 自衛隊の輸送機事情
3月27日 防衛装備庁より、XC-2輸送機の開発が全て完了して、今後は部隊運用試験に移行する旨の報道発表がありました。
昭和48年(1973年)のC-1輸送機より、実に44年ぶりの国産輸送機就役です。
C-2輸送機とは、どんな輸送機なのか、自衛隊の輸送機事情の歴史も交えて解説していきます。
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C-46から国産YS-11へ
航空自衛隊発足後、初めて導入された輸送機は米国のC-46輸送機。
C-46輸送機はC-47スカイトレインなどと並んで、第二次世界大戦における連合国軍の航空輸送を支えた名機で、1954年の航空自衛隊発足とほぼ同時に、米国からの供与品という形で、航空自衛隊に導入されました。
C-46は1970年代後半まで使用され、今も輸送隊を置く基地にはゲートガードとして、その姿を残しています。
その後、C-46の老朽化が進むも、未だ後継機開発の目処がつかず、航空自衛隊では、間を埋める存在として国産旅客機YS-11を輸送機及び人員輸送機として導入することになります。
1960年代中盤の事です。
C-46もYS-11も航空自衛隊の貴重な輸送手段として重宝しましたが、大きな欠点がありました。
「旅客機ベース」だったという点です。
旅客機ベースの機体は基本的に貨物の積載は、地面から高さのあるカーゴドアからの積載になるため、何かと手間が掛かります。
1950年代には既に軍用戦術輸送機の原点にして頂点と言われるC-130が開発されており、旅客機ベースの輸送機は既に時代遅れになりつつあったのです。
国産輸送機C-1へ
C-46の老朽化を受けて、次期輸送機C-X計画が開始。
既に当時C-130が存在したため、これを輸入する案もありましたが、当時の政府は国産開発を決定。
これにより生まれたのがC-1輸送機です。
C-1輸送機は、高翼配置、後部ランプドア、フラットな貨物室などC-130で生まれた戦術輸送機の基本的なスペックを満たしており、またエンジンはボーイング737シリーズに搭載されているものと同じP&W JT-8Dエンジンをライセンス生産により導入したことで、十分な出力を達成しました。
ただし、C-1は戦術輸送機としてはペイロードが8tと小さいこと、また致命的な欠点として「航続距離の短さ」というのがありました。
これは機体開発の問題と言うよりは、当時の国内政治事情によるもので「航続距離の長い輸送機は海外への進出と受け取られかねない」という反戦色の強い次代に生まれた故の悲劇と言えます。
結果、硫黄島航空基地まで行って帰って来るにも増設タンクを設けなければならず、更に沖縄返還後は本土と沖縄の輸送にすら支障が出るという状態になり、結果当初予定数の半分ほどで調達を終えてしまいます。
C-1の欠点を補うため、C-130を導入
導入が早期に終わったC-1の代わりとして導入されたのが、C-130H輸送機です。
C-130Hは西側諸国のベストセラーとも言える機体で、15tを超える高い積載能力と日本全土をカバーするのに十分な航続距離を有しており、自衛隊のPKO活動による海外派遣でも大きな活躍を見せることになります。
しかし、C-130H輸送機にも欠点はありました。
沢山積んで、遠くに飛べるのは良いのですが、「足が遅い」のです。
C-130Hのエンジン型式はターボプロップ×4。
巡航速度はM0.5程度でM0.75~M0.8が主流のジェット機に比べて、7割程度しか出せません。
これが意味するところは「旅客機と同じ飛行経路は飛べない」ということです。
日本の空は非常に狭い、とよく言われますが、自衛隊の輸送機とはいえ好き勝手な空域を飛ぶことは出来ません。
しかし、C-1やC-130Hの巡航速度では旅客機の飛行路線に合流する事は出来ず、これが高速化において大きな足枷となっていました。
これを解決するべく、開発されたのが今回開発されたC-2輸送機です。
高速・大量輸送可能なC-2輸送機へ
C-2輸送機の開発は2001年より開始。
C-X/P-X計画と言われ、海上自衛隊の次期哨戒機P-Xと同時に開発を進めることにより、一部設計の共通化でコスト削減を図るという計画でした。
しかしC-X開発計画は、そう平坦な道とはならず。
胴体の強度不足でヒビが入る、リベットの不具合が発生して試験機のリベットが全交換になる、耐圧試験を行ったところ強度不足で後部カーゴドアが吹っ飛ぶ…
苦労に苦労を重ね、当初の予定では平成25年度に開発完了・部隊配備開始の予定だったところが、気付けば平成28年度の本日まで3年の延長期間を経て、完成に漕ぎ付けたのが、C-2輸送機です。
C-2輸送機の搭載量は従来のC-130Hと比較して2倍近くになる36t。
これにより従来の自衛隊輸送機では不可能であった機動戦闘車1両の空輸もスペック上では可能となっており、運用に大きな柔軟性が生まれています。
また、従来の輸送機で課題となっていた高速飛行についてもB767などと同じエンジンを搭載する事でM0.8程度と、一般的な旅客機のそれと遜色ない速度まで向上。
これにより高速航空路を使用してのフライトも可能となりました。
実際のところ、C-2輸送機の開発は完了したとは言っても、実際に部隊で使ってみて初めて分かる不具合や問題点と言うのは多々あります。
恐らく当面は、新たな問題が発覚するのは「当たり前」くらいに思うくらいがちょうどいいかもしれません。
しかし輸送機は軍事力の要となるものであり、C-2が今後の自衛隊を支える上で不可欠なものであることは間違いないと思います。
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