HARUKAZE

自衛隊・ミリタリーに魅せられて

間違いだらけのクールビズ。社員の健康を犠牲にして、払うべき費用をケチってはならない。

ブログのテーマとは全くと言っていいほど関係無いお話ではございますが、昨今「クールビズ28℃っておかしいやろ」という声をよく聞き、元本業(詳細は伏せさせて下さい。ただエネルギー関連の資格は所持しています)として、幾つか書きたいことがあったので、この場を借りて書かせていただく次第です。

結論から言うと「クールビズ=28℃設定」は何の根拠も無く、またそれを推し進めるのは主に経営者が極端に無知であるか、あるいは「ケチ」「ブラック思考」だからという理由です。

そもそもクールビズって義務なの

クールビズをやれなんていう義務は日本に存在しません。

そもそもクールビズは環境省が主体となって提言した「運動」であり、法的義務を定めたものでもなんでもありません。

一定規模の事業者に対して法令や条例で「CO2排出量を削減するための計画と、その実行」という省エネルギーに関する決まり事があるだけで、クールビズはそれを達成する為の手段です。

なので、クールビズをやるというのは

「CO2削減と省エネルギーに協力する一環として、うちはクールビズをやります」

と言ってるだけなのです。

「28℃設定」と「28℃以内を保つ」の違い

28℃という数字については、ビル管理に関する法律や労働安全衛生に関する規則における「上限値」として定められているものです。つまり違法かどうかのボーダーラインというところです。
あくまでも「これ以内に収めろ」という数字であり、設定値を28℃にしろという話ではありません。

空調機・エアコンの設定温度とは、自動制御の「平均値」です。
そして自動制御とは「波形」です。

あくまでも「平均値」なので実際にはその前後を波のように行ったり来たりしながら設定温度を保ち続けようとします。
当然、設定値を超えることも頻繁に起きます。

なので28℃以下を保つことを目標にするなら、本来28℃より少し低めの温度にしないといけません。

室温を一定に保つというのは意外とシビアです。

外からは陽射しがガンガン入ってきますし、ドアを開ければ屋外や廊下の空気も流れ込んできます。
パソコンやコピー機は強力な熱を発していますし、室内にサーバーの類でも置いてあれば相当な熱になります。そもそも人体そのものも熱源です。
(消費電力量=ほぼそのまま発生する熱量と考えて良い。1000W消費する機械があるなら、電熱ヒーター置いてるのと同じこと)

最近のオフィスは断熱性が高まってることもありますが、2月や3月でも昼間は冷房運転掛かってるとこも珍しくありません。それくらい室内で発生する熱量が凄まじい大きさなのです。

対してエアコンの室温制御というのは基本的にフィードバックの比例積分制御です。
大雑把に言うと「設定温度と室温の差を検知して、それを無くすように出力を調整する」ように出来ています。

なので外から熱い空気が入ってきたとしても

部屋の温度が上がった→エアコンの出力上げないと!→冷やし始める

となります。

しかもエアコンに限らず、機械・自動制御というのは、急激な操作を嫌います。
簡単に言うと車を走らせるときに急アクセル・急ブレーキを繰り返したら、エンジンやブレーキを余計に消耗するのと同じことです。


精密部品の多いエアコンも、激しい動作を繰り返すと故障しやすくなるので、制御はじんわりと効くように設定されています。
(高圧の冷媒ガスを制御する弁やコンプレッサーの塊です、エアコンは)
その為、一時的に温度が急上昇しても、すぐに出力を全開にして冷やすような運転は出来ないのです。

よって「室温を28℃以内に保つ」ためには、設定温度は最低でも1℃、出来れば2℃くらい低くすることが理想です。
車だって安定して走るには車間距離確保しますよね?同じことです。

28℃に保つために設定温度28℃にしているというのは、車間距離を全く空けずに走ってる頭のイカれた車みたいなもんだと思ってください。

広告



そもそもクールビズ=室温を高くするではない

これが非常に勘違いされがちなところなのですが、クールビズは室温を高くして省エネしようという運動ではありません。

「軽装や各自の工夫で、エアコンに依存しなくても快適に過ごそう」

が本来の趣旨です。

人間の体感温度を決める要素として、温度・湿度の他に

気流・輻射熱・運動量・着衣量

があります。
(予測平均温冷感=PMVの指標を算出する要素)

気流とは人体に当たる風の強さのこと。当然、強い風を受ける方が涼しくなります。

輻射熱は周囲の環境から人体に加わる熱のことです。
例えば陽射しを浴びれば熱い、火の近くにいたら熱いというのは、この輻射熱によるものです。
オフィス内だと窓に近いところにいる人や、高温を発するOA機器などに近いところにいる人は、より強い暑さを感じます。
(体温より暖かいものの近くにいれば、放射伝熱により熱は移動するのです)

運動量は人体がどれだけ運動しているか、更に言えば「体内でどれだけの熱量を発しているか」という要素です。当然、リラックスして寝てるときが一番小さくなります。
頻繁に人が動き回るオフィスは、座ってる時間の長いオフィスより体感温度が上がって当然です。

着衣量は、衣服の断熱性をcloという単位で表します。
屋外で強い日差しを受けているような状況でなければ、一般に軽装の方が有利になります。

こういった温度・湿度に起因する要素意外を工夫する事で、同じ温度でもより体感温度を下げて快適に過ごそうというのが、本来あるべきクールビズの趣旨なのです。

薄着・軽装が一番有名ですが、小型の扇風機を併用する、窓からの輻射熱を減らすために断熱性の高いカーテンを使うなどもあります。

当然、なんの工夫もしないで、温度だけ上げたら暑いに決まってます。

なのに「温度の設定」だけが馬鹿の一人歩きを始めて、本来の趣旨が置いてけぼりになっているのです。

クールビズなのにジャケット・ネクタイ着用なんて論外も論外です。

ジャケット・ネクタイ着けてたら、それだけで体感温度は2℃は確実に上がります。

クールビズが会社にとって都合がいい訳

話を変えまして、何故強引・無謀とも言えるクールビズがこれだけ横行しているのか。
当然、無知・無理解というのもありますが、筆者は主に以下の2つを考えます。

①省エネ法のCO2排出量削減を達成する上で非常に安価だから

先ほど言ったとおり、一定規模の事業者には「CO2排出量を削減するために、省エネルギーに計画的に取り組め」という省エネルギー法の決まりがあり、オフィスビルなんかも大きいものではこれに該当します。
(削減義務については一部都道府県の条例があるのみで、国として「削減義務」はありません)

当然、手段は色々あります。
LED照明・高効率機器の導入、断熱化、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の導入etc…
この中でクールビズが好まれる理由は

「ハード面での新規投資・維持費用が非常に安い」

というところです。

大きい事業所だと、LED導入するにも何千万とか億単位で予算が吹っ飛びます。

対してクールビズで新規に用意する物なんて、せいぜい扇風機買うくらいでしょうか。
クールビズ用のワイシャツとかは、社員個人の負担になるわけですし。

今ある機械をそのまま使って従業員に我慢させるだけで会社としての義務を達成出来るんですから、これほど旨い話はないでしょう。

②電力料金の基本料金削減

家庭での電力会社との契約は○アンペアまで使用して良いという形で、それに合ったブレーカーを取り付けていますが、事業者向けも同様に「契約電力」というのが決まっています。

ただ、この契約電力、基本的に更新が1年に1回です。

そして、1年間を通して最も電力を使うのは「真夏」です。

真夏のピーク時を基準に1年間の基本料金が決まる訳ですから、当然そこを抑えたほうがコスト削減できます。
(東京電力の動力プランで10A違うと約1000円変わってきます)

故に「夏の使用電力削減」は会社にとって都合がよく、それを達成する上で「クールビズ」→「エアコンの使用電力を抑える」は、この上なく理想的なのです。

また設定温度1℃の変更は一般に7%のエネルギー削減効果があると言われていますので、26℃に設定するところを28℃にすれば、本来払うべき電気代の13~14%前後を削る事が出来ます。

 

なので、過剰なクールビズをやる会社というのは、本来払うべき費用を

社員の健康

暑さによる社内の知的活動能力低下

で代替しているといえます。

典型的なブラック経営思想ですよね。

そもそも何度が適正な温度なの?

断言します。エアコンの設定温度に正解はありません。

一般に女性は冷え性、男性は暑がりと言いますが、それ以外にも年齢や個々の体温調節機能、体質などによって、どの温度が快適に過ごせるかというのは千差万別です。

なので同じ温度設定でも適性に感じる人もいれば、暑い・寒いと感じる人も、いるのが当然なのです。

どの温度設定が適切かは、各々の会社・事務所で判断されて下さい。

過剰なクールビズを押し付ける会社には、どう反論するか

事務所の温度が28℃以内にならないといけないというのは、これは努力義務じゃなくて法律で定められた規則です。

事務所衛生基準規則、及び労働安全衛生法23条が該当します。

事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。

なので、どれだけ「事務所が28℃超えるのは法律に抵触しますよ」と言っても改善されないなら、労基署に通報してください。

その際

測定日時
在室人数
測定場所
使用した測定器(なるべく信頼性の高いもの)

を合わせて、実際にどんな状況なのかというのを分かりやすく記すと、労基署側も対応しやすいと思います。

あと大きなオフィスビル(事務所の用途に供する床面積3000平米以上)は「特定建築物」に指定されており、居室内の空気環境を維持しない事は保健所からの指導対象にもなります。

 

 

省エネルギーは重要なことですが、行き過ぎたやり方で従業員の健康を害するようなことは認められるべきではありません。
ましてや企業として果たすべき省エネ義務に対し、ハード面での投資をケチってその代償に従業員へ苦痛を強いるのはブラックそのものです。

オフィスで汗だくになりながら働いている方々、是非とも正しい知識を身に付けて、自らの健康を積極的に守ってください。

広告



痛飛行機弐

Theme by Anders Norén